そうだ!映画館に”ライブ”を観に行こう!ライブビューイングのビジネスモデル



映画館とデジタルネットワークが組み合わさることによって、「デジタルシネマ」という上映館が増えてきた。

フィルムをかけて映写機に映すという100数年の歴史は、ネットワークからDLPプロジェクターで投影すれば、ネットワークで映画が配信されるようになった。配給がフィルムをデュプリケートする必要がなくなり、フィルムの配給することなく、ネットワーク越しに配給することができるようになった。映画館興行主も、完全デジタルならば、クリックひとつで上映内容を変えられるから、シネマコンプレックスなどでは、客の入りの状況を見ながら、どの作品をどのサイズのシアターで上映するのかを直前であっても変更できるようになった。

…とここまでは、デジタルシネマの想定される需要であったが、2010年あたりから、「ライブビューイング」という需要が喚起されはじめた。きっかけは、サッカーなどの「パブリックビューイング」だった。SkyPerfecTVなどは、契約世帯ごとの視聴だけでなく、「番宣」ならぬ、「局宣」を映画館やスタジアムだけでなく、カフェやBARで擬似的に見られるという効果を得た。

さらに、そのパブリックビューイングでのライブ放送は、映画館の「デジタルシネマ」ネットワークを活かして、音楽アーティストのライブ会場が、全国の映画館とネットワーク接続されるようになった。いや、むしろ、インターネットを経由することによって、海外のアーティストたちのライブも視聴できるようになった。

ユニークなのが、金額設定だ。映画の1800円とコンサートの1万円の間の価格帯で自由な価格がつけられている点だ。本当は映画料金と一緒でも十分に利益は出るのだが、1回限りのライブコンサートを同時視聴という付加価値があるので、限りなく、コンサート価格に近い価格設定でもファンにとっては、見れただけ幸せ的な価値を見出している。

これは、アーティスト側にとっても、得がたいビジネスモデルだ。東京ドームを満杯にしても、一回、5万人以上入れることは無理だ。物販を展開しても、その人数以上に販売することはできない。しかし、全国各地の映画館で「ライブビューイング」が展開されることによって、映画館も、通常の映画興行よりも、より料金の高い観客を動員することができるようになった。

レイト料金で安くしている映画の上映回を「ライブビューイング」に転ずることによって、その数倍の利益を稼ぎ出してくれるのだから、ありがたい限りだ。

まだまだ試験的な試みだった「ライブビューイング」だが、【1】映画館側【2】配給側【3】アーティスト側、そして、なんといっても【4】ファン側の「四位一体」のwin-winが連鎖するビジネスモデルとなった。「ライブビューイング」のスキームは、四者の利益を創造したのである。

すでに、ラルクアンシエル公演の全世界一斉ライブや、韓国からのKARA再始動イベントinソウルAKB48の生中継「見逃した君たちへ〜」
第3回 AKB48 選抜総選挙
LUNA SEA 3D IN LOS ANGELES などと、ライブイベントが映画館で、目白押しである。
松竹の展開する、METライブビューイングでは、ニ

ューヨーク・メトロポリタン歌劇場のオペラが日本国内の映画館で楽しめる。しかも、舞台のバックステージやインタビューなども配信されるという。生の舞台を見るよりも「副次情報的」にはライブビューイングの方がリッチになるという構造だ。

http://www.shochiku.co.jp/met/about/

こうなると、ライブ会場や生の舞台を見た人も、再度、映画館で見たいという欲求にかられるだろう。「DVDビジネスモデル」の逆転現象が起きうる可能性を感じる。「DVDビジネスモデル」とは、映画館で見た映画を、より詳しく監督の音声解説などや特典映像をみるために、再度、DVDで購入させるビジネスモデルだ。

ライブビューイングのビジネスモデルでは、アーティストの生でカバーできるハコを、全世界の映画館へと拡張することを可能とした。ライブでツアーを、何度も何度も、繰り返しその回数分しかなかったものが、無限大に拡大できる機会を持つ。しかも、ツアーとちがって、セットや人件費や移動費など一切の固定費がアーティスト側に発生しないことだ。これはライブビジネスの「ライブ版権」がデジタルシネマのネットワークで拡大された。
それにより、配給のネットワークが映画館の価値を向上させ、映画以外にも活かされ、興行成績に貢献する。

地方にいるファンも地元の映画館で視聴でき、ダフ屋から購入して社会的責任を放棄するよりも、チケットが取れなければ、映画館で正しく見るという行為に変わるだろう。
フィルムの複製、配送という「コスト減」と「簡便性」を提供する「デジタルシネマ」は、ライブビューイングという金脈を見事に見つけたようだ。

インターネットとデジタル・テクノロジーは、実のところ、今までの技術を置き換えただけであり、何も新しいものを産み出してはいなかった。しかし、これからは違う。想像もしなかったビジネスがその置き換えられたテクノロジーから生み出されてくるのだ。

そう、これからは、映画館に「ライブ」を見に行く時代になりそうだ!

 
 

 



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