ミハイ・チクセントミハイの「フロー経営」かつてのソニーはそうだったby土井利忠

「フロー体験」とは…
❏明確な目的(予想と法則が認識できる)
❏専念と集中、注意力の限定された分野への高度な集中
(活動に従事する人が、それに深く集中し探求する機会を持つ)。
❏自己に対する意識の感覚の低下、活動と意識の融合。
❏時間感覚のゆがみ – 時間への我々の主体的な経験の変更
❏直接的で即座な反応(活動の過程における成功と失敗が明確で、行動が必要に応じて調節される)
❏能力の水準と難易度とのバランス(活動が易しすぎず、難しすぎない)
❏状況や活動を自分で制御している感覚。
❏活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。

「グループフロー」
❏創造的空間配置:椅子、コルクボード、図表。
机は置かない。そうすれば立って動きながらの活動が主体となる。
❏活動の場のデザイン:情報を書き込む図表、流れ図、企画の概要、熱狂(ここでは熱狂も場所を占める)、安全な場所(ここでは他に何が考えられるかを誰でも言うことができる)、結果掲示板、オープントピック
❏並行した、組織だった作業
❏グループの集中を目標に定める
❏存在しているもの(原型)の発達
❏視覚化による効率の増加
❏参加者の意見の違いはチャンス

https://ja.wikipedia.org/wiki/フロー_(心理学)

ハンガリー出身のアメリカの心理学者。「幸福」、「創造性」、「主観的な幸福状態」、「楽しみ」の研究(いわゆるポジティブ心理学)を行う。フローの概念を提唱したことで知られる 
https://ja.wikipedia.org/wiki/ミハイ・チクセントミハイ

日本語で言語化すると、まさにこれは、集団で、「ハマっている状態やキマっている状態。ハイな状態」だ。

フロー経営とは… 土井利忠

ミハイ・チクセントミハイの「フロー状態」による経営。かつてのソニーはそうだったby土井利忠

混沌とした秩序が、現場の活力を生む「フロー経営」と私が呼んでいる状態にあったということ。それが過去のソニーにおける躍進の全てだった。創業以来、混沌とした秩序の中でソニーのフロー経営が続いていた。

 「フロー」という言葉は米国の心理学者、ミハイ・チクセントミハイ氏が提唱した概念なんだ。「フロー」の状態に人間が入ると、その時に手掛けている作業に完全に没頭して作業がはかどる精神状況になる。会社の現場が、仕事がおもしろくて夢中になっている社員があふれているのが「フロー経営」。まさに創業期のソニーの開発現場はこんな状況だったんだ。

 我々エンジニアはソニーの開発現場がフロー経営の状態にあることが当たり前だった。この状態を江崎さんなりの解釈で、「混沌とした秩序」と表現したんだと思う。

 エンジニアが夢中になって新しいことに挑戦する。そういうエンジニアを大切にして、創業期のソニーは伸びてきた。今だから言えるけど、ソニーの経営はものすごく先進的だった。米国の合理主義経営の先を行っていた。

 だけど1995年に出井さんが社長になって、「欧米に比べて遅れている」と勘違いして、米国型の合理的経営と言われるものを無理やり導入した。それでソニー創業期の躍進の原動力となっていたフロー経営を見事に破壊してしまったんだな。

 フロー経営とは何か。それは理性で分かっても仕方なくて、体で覚えるしかない。それは、管理ではなく現場の人材に任せるという信頼の経営なんだ。ソニーの創業者世代は、これを当たり前のように実践していた。だから現場も体で覚えていった。でもそんな人材は世代が変わって、もういないよ。

 井深さんは、次々に新しいことをやろうという意識で、おもしろい仕事にエンジニアを自由に挑戦させていた。新しい製品を作ってヒットしても、そこで満足しないで、「次は何をやるんだ」って現場を鼓舞し続けていたんだ。

 これは、「もっとおもしろいことをやりたい」「もっと世の中が驚くモノを作りたい」という、心の底からそれをやりたいと思う「内発的動機」を、社員に起こさせるマネジメント手法だったんだ。

 井深さんの口癖は「仕事の報酬は仕事だ」だった。難しい仕事に挑戦して成功すると、もっと面白い新しい仕事を任せる、という意味だよ。報酬や地位で人を釣るんじゃなくて、仕事そのものに喜びを見出させる。これが「フロー経営」の極意だ。

「そしてソニーはロボット開発をやめた」AIBOの開発責任者、土井利忠の述懐(その2)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/16/031800001/061000011/?P=1