ヨルダンからバグダッドへ

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【日刊デジタルクリエイターズ】 No.1452   2004/01/26.Mon.発行
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     <赤ジャケットにテンガロンは街では一番目立っている>

■KNNエンパワーメントコラム
 ヨルダンからバグダッドへ
 神田敏晶

KNNポール神田です。

一体、今日は何曜日かがわからないような生活が続いている。
スケジュールはあってないようなもの。

インドのムンバイで3日並んでも、ヨルダン行きのチケットがとれず、いったん、
タイのバンコクまでもどり、カオサン通りの安宿街でチケットを取ると、翌日に
簡単に取れてしまい。安宿をキャンセルして、ヨルダンに到着!

ヨルダンにつくやいなや、とても寒くて、半ズボンにサンダル履きをさっそく着
替える。いきなりカバンを持ち、あれやこれやと世話をやいてくれるが、チップ
のおねだり攻撃が始まった。アラブ圏にはいると、これまでの東南アジアの様相
と雰囲気がガラリと変わる。

乗り合いバスでアンマン市街地へと向かう。バスの中では、コーラン(お経のよ
うなもの)の歌が鳴り響き、早くもi-podでコーランの歌を阻止する。i-podは旅
の強力なツールだ。

やはりいたイラク入りする日本人のプレスと合流して彼らの予約している安宿へ
向かう。途中で両替すると一万円がたったの52ヨルダンディナールに化けてしま
う。すごくさみしい感じだ。しかし、物価は安いので、ちょっと安心。手袋と帽
子とセーターを買って、8ディナール。

ホムスというチックピースという豆のペーストとナンに似たピーターブレッド、
そしてシシカバブとコーラで約2ディナール。インドに比べると高いが、食費も
安い。モスリム(イスラム圏)であるが、酒を飲める場所は密かにいっぱい存在
している。

頭に独特のかぶりものをしながら、水パイプを吸い、かくれてビールを飲んでい
る彼らの宗教観はなんなんだろう?当然、女性は旅行者しかいない。

ヨルダンでは、外を歩く女性は、ほとんど、布で頭を隠している。とても神秘的
である。外のレストランでは、ひげもじゃの男同士が大声でいつもたむろってい
る。女性はその場にはほとんどいない。このヨルダンでは、女性は家にいて家庭
を守るのが最大の仕事らしく、外を歩くときには、肌や顔をできるだけ露出しな
いそうだ。しかし、市場にはエロチックな女性用の下着がたくさん販売されてい
る。しかるに、外で鬱積していることが、家では相当にいやらしいことをしてい
る国民性なのかもしれない。

街角では、ニセモノDVDが1ディナールで販売される約175円。東南アジアとほぼ
いっしょだ。「タイムライン」と「キルビル」と「スクールオブロック」をお土
産に買ってみた。まともなのは「キルビル」のみで「タイムライン」は映画館で
撮影したもので、前の男の頭が時々、動く(笑)。不思議なもので、映画館で見
ているような気になる。ノイズもひどい。「スクールオブロック」は2枚組みの
CD-ROMに焼かれたもので、コマ落ちもひどくとてもみれたものではなかった。

ヨルダンで一泊すると、夜にプライベートリムジンでバグダッド行きがチャーター
できた。80ディナール。3人で割ると1000キロ近くある片道なのにとても安い。
バスだと24時間だが、リムジンでいくと15時間くらいだそうだ。

さて、22時になった。出発だ。アラビア語でなんだかドライバーとホテルのエー
ジェントがいいあらそっている。なんだか80ディナールを前金でないといけない
そうだ。そんな理不尽な話しはない。結局、いろいろと討議をかさね。半額前金。
半額はバグダッド到着後ということになった。いつも中東アラブ圏ではこのよう
な交渉ごとにまきこまれるので面倒くさい。

プロレスラーのタイガージェットシンを太らせたドライバーとプレス3人を乗せ
たリムジンという名の単なるシボレーは、アンマンをスタートしたのは11時ちか
くだった。一時間もしないうちに、ジェットシンはパン屋にのりつけ、膨大な数
のピタブレッドを購入し、後ろのトランクにつみこむ。これはきっとイラクには
パンがないものと思い、僕もパンを買いこんだ。1ディナールで山ほどピタブレッ
ドは購入できた。

夜中の2時にはヨルダンの国境に到着した。パスポートを持って、並ぶ。夜中で
もかなりたくさんの人が並んでいる。税金を払って出国。いよいよここからはイ
ラクだ。イラクに入国するとここでもパスポートを見せる。官僚的で車からオフィ
スにいって見せてもどってくるだけだ。

荷物のチェックもなにもない。テロリストは簡単に武器をヨルダンからイラクに
持ち込むことができる。途中でアメリカ兵が2人で護衛している。手には自動小
銃。さすがにアメリカのアーミーはカッコいい。ふと、小さな頃から、タミヤの
模型やGIジョー、コンバットなどで、アメリカの軍服がかっこいいと刷り込まれ
ている自分を理解した。

ジェットシンは、1時間に一度休憩するが、道路を平均150キロ、最高速は210キ
ロほど出している。ドイツのアウトバーンよりもすごい。さすが石油の国でアス
ファルトは無尽蔵にある。直線の距離が地平線のまだ向こうにまで伸びる。ジェッ
トシンが居眠り運転しないことを祈る。なんどか路肩から外れて、砂漠につっこ
みそうになるが、ジェットシンは時速200キロでイラクのアウトバーンをぶっ飛
ばす。

朝の7時頃になると、バグダッドの西のパルージャに入った。アメリカ兵の戦車
が道を封鎖。ヨルダンからの車は、道なき道を迂回して新たなバグダッドへの道
を作る。このアラブの精神はすごすぎだった。普通、通行止めであればそこでお
となしく待っているる日本人のボクにはとても彼らの行動は新鮮であった。

またしばらく行くと、戦車で封鎖。また新しい道を砂漠に作る。まるで「アラビ
アのロレンス」の気分だ。アメリカ兵に取材しようとすると、ビデオは厳禁で撮
るなと忠告される。同盟国なのに冷たい対応。

10時になるとバグダッドに到着。黒焦げになった家や砲弾で爆破されたビルを探
すが、ほとんどどこにもなし。ごく一部攻撃をされた地区をみることができるが、
ほとんどが普通の状況に見える。インドから来たせいか、インドのスラムのほう
がよほどひどい状況だ。11時、テレビの報道で有名なパレスティナホテルの前に
到着する。残りの半額をジェットシンに払い、フセイン大統領の銅像が引き倒さ
れた公園前で、ようやくバグダッドにきたことを確信する。

とりあえず、今日からの安宿さがしだ。3人で手分けして、安宿を探す。「新潮」
のライターの上原さんは、一ヶ月以上もこちらで滞在するそうなので真剣だ。タ
イから来た渡邊さんは電話があるところを、ボクはネットカフェの近所とそれぞ
れが宿をさがす。

とりあえず、一泊US30ドルのホテルをみつけ、そこに荷物を放り込んだ。バグダッ
ドは電気の供給が安定しておらず、ホテルの前では強力な自家発電のジェネレー
ターがとてつもなく、大きな音をたてており、フロントで大声で交渉し部屋に入
った。

とりあえず、お湯は5分くらい待つとでたので、シャワーをあびて、真ん中がへ
たんだベッドでも体を横にして休息をとるとあっという間に夕方である。あわて
て赤ジャケットに身をつつみ取材活動開始。

赤ジャケットにテンガロンは街では一番目立っているらしく、誰もがしゃべりか
けてくる。アラビア語はわからない…。しかし、取材するにはとても便利だ。

街角の映画館は大人気のようだ。イスラム圏でもやはり男は男で、抑制さ
れているだけその反発は大きい。このインターネットカフェ(1時間2USドル)
でもブックマークには、みみず文字(アラビアの文字)のブックマークが並んで
いる。

バグダッドに到着して数十時間たったが、バグダッドでは、何もない戦後の1日
がはじまっていた。人道支援などの意味は、このバグダッドにはないように感じ
る。インタビューした中では、戦争前の経済制裁のほうが物資は大変だったよう
だ。現在は、アメリカ兵がいるためにさらに物資が入りやすくなったという。

バグダッドの街には、バリケードにかこまれたパレスティナホテルに世界のメディ
アが暇そうに待機しているが、米国兵のいるグリーン地帯や刑務所などのほうに
いったほうがエキサイティングなようだ。

もちろん、サモアには自衛隊がきているので、一斉にそちらに300名近い取材陣
が動いているという。サモアまで南下するかどうか、ちょっと今は興味がうせて
きた。このバグダッドにいても何もエキサイティングなことはないし、サモアの
状況もほぼ読めてきた。自衛隊が来ても何も変わらないだろう。日本が協力した
という証拠づくりのためようにしか思えない。

少なくとも、バグダッドには、物資よりも、エンターテインメント用のDVDプレ
イヤーをたくさんあげたほうが支援になるんではないだろうか?

日本で報道されていることと現場の日常のギャップほど面白いものはない。

インターネットでしか日本の状況はわからないが、日本のテレビでの自衛隊派兵
はどのように報道しているのか興味ぶかい…。

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