【映画】「アンヴィル ~夢をあきらめきれない男たち~」
泣ける!
どんなことをしてでも、やりたいことの夢を追い続ける。男たち。
バンドが、家族よりも恋人よりも大事な男たち。
音楽業界で君臨できるのは、本当に、ラッキーな人たちだけ。
夢を叶えるためと言うよりも、夢を見続ける事のできるタフネスさがうらやましく思えた。
マネージャーやファン、かつての業界、家族、自分をとりまく環境はかつての栄光の時期とは雲泥の差。社会環境が変われど、自分たちが対応できない不器用さ。自分たちが好きな音楽をやり続けることの難しさがよくわかる。
カリスマ的リーダーがカリスマでなくなった時、無二の親友のバンド・メンバーを失う時、いろんな、シチュエーションがさらに痛々しい。
夢はあきらめた時に終わりと言われるが、あきらめきれない夢ほど辛いものもない。
夢は、むしろ、あきらめるためにあるのかもしれないとも取れる。
手が届きそうで、いや、一瞬掴んでしまった夢ほど、忘れ難いものだ。
どんな状況においても、夢をあきらめない姿は、他人からは同情の念で見られるが、本人にとっては苦痛ではないのかもしれない。
夢は人間の行動を麻痺させている。苦痛を苦痛とも思わせないのかもしれない。
経済的な成功ではなく、経済的な持続さえうまくいかなくても、それが続けていくだけのモチベーションが夢だったのかもしれない。
たとえ、才能があっても、エンターテインメントの世界はそれだけでは成立しない。
そう考えると、エンターテインメントで生きている人たちには敬意をもたざるをえない。
最近は、「落ち目映画」をよく目にするようになった。なぜか多くなった気がする。
ミッキー・ロークの、「レスラー」とも似ているが、「アンヴィル」のほうがドキュメントで痛々しい。
レスラーもいい映画だ。ドキュメンタリ-タッチでの背後からずっとカメラが追跡している。
ジャン・クロード・バンダムの落ち目ぶりを描いたアクション
「その男バンダム」にも通じる。この映画もオススメだ。
落ち目の人ならではの哀愁がただよう。
日本でもこの手の映画ならば、低予算で、かつて知名度がある役者が使えるので、展開してもよさそうだ。
日本人はいつでも、「あの人は今?」的なゴシップに興味しんしんだからだ。
人のことよりも、自分の事を心配しろ!といいたいがw
成長、成功よりも、こちらの「落ち目」のほうが、現実的であり、リアリティと情景が親身であるだけ、心に訴える力が強い。
映画によって、心の耐性が鍛えられた思いだ。
落ち目映画のオススメは、やはりクリント・イーストウッドの「グラン トリノ」だ。
50を超えて見ると、人生の登山の下山中を意識せざるをえなくなった。