エジソンというと、世界の発明王と思われがちだが、発明の多さと引換えに企業経営となると、幾多もの失策を繰り返している。
世の中のタイミングを発明によってぶち壊していった企業が、世の中のタイミングによって引きずりもどされる歴史は、現在のハイテク企業経営、特に、新たな産業ドメインで進出するインターネット系企業には貴重な教訓となるだろう。
幾多もの新しいアイデアを産み出すが、市場で利益を上げることができない。しかし、新しい産業へのドアを開き、人々にテクノロジーの道を示している。
組織人としてのエジソンは評価されていないが、発明人としてのエジソンの名は歴史に燦然と響き渡る。
歴史の評価は、企業の時価総額ではなく、企業価値で評価するようだ。
総ページ数400ページにおよぶ本書はエジソン研究家にとっても、新たな製品の普及販売のケース事例としても参考になる部分が多い。
特に、口述用の蓄音機や、のぞきからくりとなるキネトスコープなど、発明品が最初のビジネスモデルのまま進化しないことは歴史がすべて証明している。
ネットビジネスが初期のビジネスモデルと成功しないところと近似しているのだ。
新産業は、ある程度、発明品の死屍累々の蓄積の上に勃興してきた。
それらは、人々の目に多く触れ、フォロワーを多く、インスパイアさせることによって、新たな産業が産声を上げる。先行者利益を得るよりもはやく、19世紀の世界は進化していった。
130年前のベンチャー企業経営から現在の経営を学べる書だ。