「会ったことはないけれど、自分にとても近い他人」を発見できるblogと、「いつも会っているけれど、自分の知らなかった知人」と出会えるソーシャルネットワーキングは、まったく別物である。しかし、このどちらもインターネットならではの、新しいコミュニケーションのあり方を感じることができる。
ソーシャルネットワーキングは、日本に伝搬されてからblogと親和性を増し、新たな世界観を築きだしている。
【1】電子メールの代替機能
ソーシャルネットワーキングは、SPAMやウイルスで破綻しかけるサイバー社会に、私書箱的な機能を提供していくだろう。すでに、ウイルスソフトなしで電子メールなどは、使えない不都合な世の中になってしまった。一部のバカどもと、それをクリックしてしまうさらなるアホウどもによって、電子メールの機能が崩壊されつつある。
考えてみれば、電子メールのアドレスは、番地(アドレス)さえあっていれば、どんなところからもDMやジャンクを勝手に受けとってしまう。実際に僕のマンションのメールボックスも不要な情報で一杯だ。管理人もポスティング業者となぜか仲良しになってしまっている不思議な世界でもある。
不必要なチラシの中に、大事なハガキが埋もれている実社会と同じ状況でもある。そんな不都合なポストをソーシャルネットワーキングは、「ネット私書箱」として機能してくれるだろう。
変なチラシを投げ込む奴は、ボイコットできるし、転職しようが、夜逃げしようが、ソーシャルなら潜伏値を伏せたままコミュニケーションできる!。この場を借りて言わせてもらおう「夜逃げしてしまった親愛なる○○さん、連絡待ってます。ボクは、日本のソーシャルにすべて参加しているので、メール一本なげてください。実はずっと心配してます。
夜逃げして人までも、連絡がとれるというのは、いい社会的な手段でも、ないだろうか?
【2】個人ヒストリー&レジュメとしてのソーシャル
電子メールが所属社会のドメインに影響されるが、ソーシャルの場合は属人的な要素が強い。○○会社の誰々というよりも、個人がメインだ。個人の経歴の中に会社がリスト化されている。さらに、その個人の交遊による人脈までがそこには可視化されている。学生が就職活動用にその場しのぎでつくるウェブサイトではなく、学生時代のblogにソーシャルネットワークによって青田買いもおこなわれるだろうし、中途採用では、3ディグリーまでの交遊リストまで採用試験に登用されてもおかしくはない時代になることだろう。
【3】「メールマガジン」による「RSSマガジン化」
電子メールを媒体とした「メールマガジン」もSPAMによって、氷河期を迎えている。SPAMフィルタにひっかかるし、今以上にメールの仕分けに時間をかけたくない。あまりにもたくさんのメルマガの前に実は電子メールが破綻しかかっている。しかし、RSSで好きなメルマガをblogやソーシャルで読めればどうだろうか?POPをせずに、自分のRSSリーダーにひっかかる情報のみをサブスクライブすればいいのだ。するとほとんどのメルマガがRSSでパブリッシュする形態をとりはじめるだろう。「RSSマガジン化」が始まる。
そんな時にソーシャルでは、知人がどんな「RSS情報」を受けているのかがとても重要になる。要は、どんなメルマガを読んでいる人なのかも、その人なりをあらわす大事な要素となるのだ。どんなコミュニティに属しているのか、どんな物に興味を持っているのか、というのと同じレイヤーで考えられるだろう。
【4】組織としての、コーポレート・ネットワーキング
厳密にいうと、ソーシャルではなく、「コーポレート・ネットワーキング」と呼ぶべきだが、ソーシャルネットワーキングは、企業組織の中では有効に使えるツールであろう。特に大きな組織のタテ割りの会社の中では、縦横無尽にコミュニケーションできるナレッジツールとなることだろう。
あるプロジェクトに参加した人同士が、社内の人間を紹介する。blogでその人の興味とキャリアから次のプロジェクトにオファーをかけるなど。R&Dでは、新しい技術を公開しながら、営業からのニーズをひろい集めるなど。企業における個人レベルの感性やアイデアを文書でハンコをついてあげていくのではなく、興味のある人物同士がフィルターとなって吸い上げていくという仕組みがなりたつのである。人的レベルのナレッジマネージメントが安価に構築することが可能となる。
ソーシャルネットワーキングのビジネスモデルともなるであろう。
【5】パブリッシングツールとしてのソーシャルネットワーキング
以前から Frickr.comに注目している。 http://www.flickr.com/ は、Flashインタフェースでできた写真によるインスタントメッセンジャーが装備されたソーシャルネットワーキングだ。使い方がまだまだ微妙だが、面白い傾向があらわれている。自分が撮影した写真を公開すると、その写真がコメントつきで、いろんな人の手にわたるうちに(実際はサーバの中だけだが)、いろんなコメントがつき、写真という表現によって、新しい「友」を見つけることができるのだ。最近は、アノテーション機能がつき、写真のとある場所をクリックすることによって新たなメッセージがあらわれるというギミックも付加された。
ソーシャルは、人がメインだが、その人の生産したもの創造物、著作物もネットワークの世界の中で付加価値が生まれていく素養を感じることができつつある。
【6】ウイッシュリスト ビジネスへの発展
興味のある物についてレビューしながら、アフリエイトという方法もあるが、欲しいものをリスト化したり、購入したものを可視化することによって、個人の嗜好やライフスタイルは、より明確になるだろう。マスメディアで大量に農薬散布的に広告を打つ事がコストパフォーマンスにあっていた時代から、よりセグメントされたライフスタイルや嗜好にあわせた広告を打つ事が可能となっていくことだろう。露出数対購買率で検討しなければならないだろう。
ネコが好きなソーシャル・コミュニティにネコと住める都心のマンションの広告を打つほうが効果的だし、商品を購入する際に、店員よりも詳しい知人の推薦があった方が、口コミ効果はさらに高まる。そのアフリエイトをみんなでプールして、何かのパーティーに使ったり、旅行で楽しむほうがさらに顧客の粘着率は高まるだろう。グループアフリエイトの考え方もソーシャルでは可能となる。まずは、ウイッシュリスト機能が搭載されることによって、ECなどへのリンクは容易に考えられるだろう。また、他人へのオークションよりも知人のオークションの方が実は楽しいものなので、オークション市場もソーシャルとは、相性がいいだろう。
【7】知人との新しい出会い
人は何年もつきあってきて、すべてをわかったつもりでも、その人のすべてを掌握することなど不可能だ。ソーシャルネットワーキングの一番のポイントは、知人のことをより知ろうと思うと、さらに知る事ができる点だ。いまは、まだそのプリミティブな段階ではあるが、信頼がある上にさらに、共通の興味や共通のゴールが見えたとしたら、単なるおつきあいでは終わらないだろう。
そこには、必ずポジティブなアクションが発生し、新たなニーズや、イベントが発生し、資金が動くことだろう。
今は、まだお金の香りがあまりしないソーシャルも、blogと同様にたくさん人が集まっていくことによって、価値を増やしていくことだろう。
もはや、メディアの情報をだまって信じる時代ではなく、blogやソーシャルによって自由に語らい、発表し、新しい時代のメディアリテラシーを持った世代が着々と育ちはじめてきていることに喜びを感じる。