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ついに、NECがビッグローブまでを、売却せざるを得なくなったという印象のニュースだった。
売上3兆716億円(2013年3月連結決算)のNECが、売上841億円のビッグローブを売却する予定だ。別会社ではあるが、売上の2%を占める程度の規模の会社だ。
ISP事業は伸び率の期待はないけれども、激減する心配もないいわば、静かなカネのなる木(cash cow)事業であるはずだ。インターネットのプロバイダーは、生命保険と一緒で一度契約してしまうと誰もが意識しなくなる商材だ。新規競合が現れてはじめてスイッチされるリスクはあるが、人はそうそう、ネットに繋がらなくなる不安を好んで行うものは多くない。
ビッグローブは社員数 約600人 1人あたりの売上高は、1億4000万円である。超優秀な個人売上高だ。
いくら利益率が違うビジネスモデルといえども、NECの連結社員11万人では、1人あたりの売上高は2800万円にすぎない。NECはビッグローブの1/5の売上に対する社員生産性である。
この数字を見て、NECの幹部が、売却を判断する気持ちが経営者としては、よくわからない。
まずは、NEC側のさらなるリストラで1人当たりの生産性をあげることだろう。
逆にビッグローブに大量に人を動員し、新たなサービスの分野に投資しなければならない。
いくら、ビッグローブを、841億円×3年分程度、約2523億円で売却できたとしても、NECの売上単年度の10%に未たない。NECとしてはビッグローブを売却しても、たった1ヶ月分の予備タンクが備わるだけだ。
11万人いる社員を活かしながら、製造業が生き残るには、ドラスティックな変化が必要だ。かつての製造業の成功体験が深く根付いている間は、変化は難しい。
倒産するかもしれないと11万人が真摯に思える環境を企業の幹部みずからが醸成しないと沈みゆくタイタニックでまだダンスを踊っている状態に近いだろう。
ビッグローブを手放して、1ヶ月分の予備タンクを背負うよりも、メタボで運動不足な体質改善をしなければ、また別の事業を売却していかなければならない。東京オリンピックが決定した以上、長い規模で考えるならばビッグローブの金のなる木を手放すのは無意味だと思う。
反対に、ビッグローブを購入する側としては、いろんなところが名乗りをあげるだろう。
まずは、ソフトバンクだ。携帯ではシェアを伸ばしているが、家庭の中のヤフーBB500万人に300万人上乗せできる。プロバイダーの客層は重複していないから資産として一瞬に増える。
買収金額も約2523億円ならばまったく問題ない。企業風土が合うかどうかが問題でもあるが…。携帯の基地局設営などの面などでもNECとのシナジーはあるだろう。
次は同業種のニフティだろう。シェア拡大によるマーケット戦略は鉄則ではあるが、ブランド化において、どちらもポータルとしてよりも、土管化としての価値しかみえてこないところが気になる。ユーザーは契約した時しかブランドを覚えていないという成熟した市場でもある。
そして、Googleあたりが回線周りも手にするとさらにユニークな展開をしてくれそうだ。ISP料金無料という戦略だ。その代り、すべてのパソコンの利用状況からライフスタイルまでのビッグデータが分析される。
そう考えると、今のNECにいるよりも、ビッグローブは他の企業と座組みしたほうがもっと面白いことができる企業になりそうだ。
【参照記事】
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD100SU_Q3A011C1MM8000/?dg=1
NECがインターネット接続(プロバイダー)子会社のNECビッグローブを売却する方針を固めたことが10日、明らかになった。近く入札を実施する。NECは7月にスマートフォン(スマホ)事業から撤退するなど、消費者向けの事業を縮小している。業界4位で個人を中心に302万人の会員がいるビッグローブを売却。経営資源を成長の柱に位置付ける社会インフラ事業に振り向ける。ビッグローブは09年、同業で富士通系のニフティ、インターネットイニシアティブ(IIJ)などと提携を模索した経緯がある。ビッグローブ売却が業界再編の呼び水となる可能性もある。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1310/10/news133.html
ビッグローブは300万人ユーザーを抱える日本国内最大のISPの1つ。2012年度の売上高は841億円。
(NECは)11年度に1100億円の最終赤字を計上し、財務的に苦しい同社は、挽回するためシステム構築事業への集中と不採算事業からの撤退を進めている。http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20131011_619179.html
NECでは、「今の時点では一切何も決定していない」(コーポレートコミュニケーション部)とコメントしている。同社は、BIGLOBEの発行済み株式の78%を保有している。NECは、1986年4月にパソコン通信・データ通信サービス「PC-VAN」、1995年2月にインターネット接続サービス「mesh」、1995年6月にコンテンツ販売サービス「CYBER PLAZA」をそれぞれ開始。これらを統合するかたちで、1996年7月に総合インターネットサービスのBIGLOBEが誕生した。その後、2006年7月にNECビッグローブとして分社化。約600人の従業員を抱える。
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