自分の顔をロックスクリーンに設定するトランプ大統領の心理

米東部ペンシルベニア州から首都ワシントンに戻ってきたトランプ大統領が持つスマートフォン。ロック画面に自分の写真を設定している

 

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自分の顔をスマホの待ち受けに設定するトランプ大統領の心理——ナルシシズムから読み解く権力者の自己イメージ

 

米東部ペンシルベニア州から首都ワシントンに戻ったトランプ大統領のスマートフォンのロック画面が、SNSで大きな話題となっている。2025年5月30日、大統領専用機から降りる際にロイター通信のカメラマンによって撮影された写真には、正面を向いて指差しポーズをするトランプ氏自身の写真が映っていた

このロック画面を捉えた画像はSNSで拡散し、「自分の写真をロック画面する以上にナルシシストで自己陶酔なことはないのでは?家族でも、子どもたちでもなく、自分……」などの声が投稿された また、米メディによると、2023年以降、同じ画像がロック画面に使われていることが動画や写真で確認されている

『待ち受け画面』に現れる深層心理

心理学的観点から見ると、スマートフォンの待ち受け画面(ロック画面の壁紙)には、その人の深層心理が反映される。ロック画面の壁紙というと、家族や風景、趣味にまつわる写真を設定するのが一般的だ 「持論」拡散のトランプ氏 スマホのロック画面に写っていたのは…(毎日新聞)が、自分の写真を設定する行為には特別な意味がある。

風景や景色の写真を待ち受け画面に設定している人は、心理学的に隠れナルシストの可能性があり、常に人の目を気にして行動しているタイプが多い 待ち受けで分かる深層心理!相手の画面をチェックしてこっそり性格診断とされているが、自分の写真を設定する場合はより直接的なナルシシズムの表れと考えられる。

ナルシシズムとは何か——心理学的定義

ナルシシズム(narcissism)あるいは自己愛とは、自己を愛したり、自己を性的な対象とみなす状態を言う。語源はギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソスが水面に映る自らの姿に恋をしたというエピソードに由来する ナルシシズム – Wikipedia

現代心理学では、心理学的なナルシズムの定義は、「実際よりも大きな自己イメージを持つこと」とされ、心理学者らはナルシストの性質を「えらそうなタイプ」と「傷つきやすいタイプ」の2つに分けている 自分は「ナルシスト」なのか?ナルシストの特徴・原因などをわかりやすく解説したムービー「The psychology of narcissism」 – GIGAZINE

「えらそうなタイプ」のナルシストは、外向性・支配的・注目されたがり、といった性質を持ち、人から注目されたり、権力を持つことが好きで、政治家に向いている 自分は「ナルシスト」なのか?ナルシストの特徴・原因などをわかりやすく解説したムービー「The psychology of narcissism」 – GIGAZINEとされている。

政治家とナルシシズムの関係

政治心理学の研究において、権力者のナルシシズムは重要な研究対象となっている。アメリカ中央情報局(CIA)で国家指導者の心理分析に携わった精神科医のジェロルド・ポスト(Jerrold M. Post)は、政治史で多くの指導者がナルシシズムの特性を有してきたと述べている 自己愛を強めた政治家の性格を考察したNarcissism and Politics(2014)の紹介|武内和人

近年の国家では「サイコパスよりもナルシストの方が国を治める立場につきやすい」という傾向があり、ナルシストは注目と称賛を欲し、他人が自分に従属することに何の疑問も持たず、共感能力の欠けるナルシストは、自分の力を保持するために他人を搾取することに対して不安を抱かない サイコパスやナルシストほど権力を握りやすいのはなぜなのか?どうすれば「真のリーダー」を生み出せるのかまとめ – GIGAZINE

ナルシシズムの特徴と権力欲求

ナルシシストは「自分がどう見えるかということに関心をもつ。実際彼らは、自分が追い求めるイメージと矛盾するような感情を否定していく」「自己中心的な人間であって、自分の利害に関心を集中しながらも、真の意味での自己の価値というものが——すなわち自己表現、自己抑制、品位の感情、そして誠実さが——欠けている」 ナルシシズムという病い: 文化・心理・身体の病理 | A・ローウェン, 森下 伸也 |本 | 通販 | Amazon

地位や権力を得たいという欲求は、自己愛(ナルシシズム)を理解する上で重要なポイントで、他の人々から注目されたり賞賛されたりしたいという欲求を抱く自己愛的な人々が、社会のなかで重視する要素でもある ナルシストの権力や地位への欲求|Atsushi Oshio

権力が人格に与える影響

心理学研究では、権力を持つことで人格が変化することが明らかになっている。勢力感の高まりは他者と人間らしい関係を結ぶことも困難にし、勢力感の高い個人は他者の悲しみや苦痛の表明に対する同情的反応が少なく、他者の表情から感情を読み取る精度が低くなる 心理学ワールド 105号 リーダーシップ リーダーは自らの権力とどう向き合うべきか | 日本心理学会

組織心理学の研究が明らかにしていることは、地位やそれに伴う権力を手にした人の多くが自己利益に走ってしまう傾向があることだ 【職場の心理学】権力を持つ人ほど、自己利益に走ってしまう本当のワケ

トランプ大統領のケースの分析

トランプ大統領のスマートフォンの待ち受け画面に自分の写真を設定している行為は、複数の心理学的要因から分析できる。

第一に、これは典型的なナルシシズムの表れである。ナルシシズムが危険なのは、このような性格上の特徴が継続的であり、人間関係を破壊し、他者を傷つける場合で、何を犠牲にしても勝ち続け、他人より優れていることが主要なテーマとなっている人の場合、危険が感じられる ナルシシスト・ナルシシズム。その特徴と危険性を分析 | カラパイア

第二に、権力者特有の『自己イメージの維持』欲求が働いている。抑圧的家庭で幼少期を過ごした場合や、大きな心的外傷を経験した場合、個人は自己愛を満たす資源として極端に理想化された自己認識を必要とするようになる 自己愛を強めた政治家の性格を考察したNarcissism and Politics(2014)の紹介|武内和人

第三に、政治界という特殊な環境での『自己アピール』の必要性がある。共感能力のある人は自分を高い地位に置くよりも、他人と相互関係を持ち密接に関わることを好むため、真の意味でリーダーになるべき人は権力や支配を求める傾向にない サイコパスやナルシストほど権力を握りやすいのはなぜなのか?どうすれば「真のリーダー」を生み出せるのかまとめ – GIGAZINEが、逆にナルシシストは積極的に権力を求める。

結論:権力とナルシシズムの危険な結合

トランプ大統領のスマートフォンの待ち受け画面に自分の写真を設定している行為は、単なる『自己愛』を超えて、権力者に特有のナルシシズムの表れと解釈できる。この行為は、彼の政治的パフォーマンスや意思決定過程にも影響を与える可能性がある心理的特性の一端を示している。

近年、ナルシシストは増加の傾向にあるという研究結果もあり、彼らの特性を理解することは現代社会において重要 ナルシストはストレスを感じにくく、うつ病になりにくい:研究結果 | WIRED.jpである。民主主義社会において、有権者はリーダーの人格的特性を見極める必要があることを、この事例は示唆している。


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