http://bylines.news.yahoo.co.jp/kandatoshiaki/20160630-00059451/
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KNNポール神田です!
定額サブスクリプションモデルによって、音楽も映画もアプリビジネスも大きく変革してきた。これはある意味、マニアックなニーズや最先端な声よりも、「そこそこのものがたくさんある」と満足するミドル層向けのビジネスで市場が占拠されることを意味している。これによって、読者がミドルで満足するかどうかは日本の「本好き」の熱量によって大きく変わる…同時に売れない出版社がロングテールでamazonのサラリーマン化するかどうかも問われているのだ。
20世紀は、マスメディアの誕生と成熟の世紀であった。
映画、レコード、ラジオ、テレビ、相互のメディアが複雑に関係しながら、広告から興行、パッケージにいたるまで変化し続け成長した世紀だった。そして、21世紀は、ネットによるコンバージェンスの世紀であると感じている。ネットにおけるサービスの世界であれば、もはや「それら」のメディアは、パッケージという「容れ物」の差でしかない。文字なのか画像なのか、音声なのか動画なのかの差でしかない。
マスメディアの定額サブスクリプションモデル化
スマートフォンの台頭によって、すでにみんなで視聴する「お茶の間のテレビ」は必要とされていない。それぞれが好きな時にすきな時間の消費をおこなう。さらに、無料で遊べるメディアが潤沢にある中で、定額サブスクリプションモデルを推進するのが、amazonなのである。
AppleやGoogle、Netflixやhuluらとの明確なamazonの違いは、「Amazonプライム」という会員組織だ。本来は宅配料無料というサービス組織だったものが、現在では、音楽や映画、テレビ番組、ゲームアプリにいたるまでオンデマンドで提供している。さらに、今後はAmazonの本業であった、書籍販売を、読み放題という定額サブスクリプションモデルを加えようとしている。Amazonは最終的には購買、配送に至るまでユーザーとの接点が多くある。筆者は定期便サービスで毎月、Amazon商品が定期的にやってくるサービスまで利用している。
「そこそこのものがたくさんあれば満足できる」属性
定額サブスクリプションモデルによって、音楽も映画もアプリビジネスも大きく変革してきた。これはある意味、マニアックなニーズや最先端な声なプレミアなものを高価でも買うという属性の人々ではなく、「そこそこのものがたくさんある」ことで満足できるミドル層向けのビジネス市場が成長していることを物語っているのだ。
今まで、売れ筋やランキングから外れた、売れなくなったロングテールの製品もamazonではしばしば買われてきた。しかし、それらをパッケージ化することによって新たな市場が形成できることをamazonは、ユーザーの行動履歴から推測できている。
そのデータをもとに、日本の出版社の電子書籍化とそれをグロスで仕入れてユーザー数の売上から視聴履歴によって分配するモデルは、出版社にとってみれば、「金のならない木」からもすこしづつ金になるということが見えてきているからだと思う。
実際に「dマガジン」のような雑誌読み放題サービスで、今まで買わなかった雑誌もデータでブラウズしている。結果として立ち読みするような週刊誌を月額サブスクリプションで読み放題するようになった…。しかし、実際に読めるのは月に数冊だ。10冊にも及ばないだろう。しかし、一冊分の値段で10冊も雑誌を読めれば満足なのだ。それはアナログ印刷雑誌の価格が念頭にあるからだろう。制作コストは紙を出版しなければかなりのコストを削減できる。定価の60パーセントは印刷と流通と在庫コストだったからだ。過去に出版した書籍を電子書籍化して在庫ももたずに、「視聴率」によって分配金がもらえるのならば、もはや黒船だろうが、amazonだろうが、背に腹は変えられないのが出版社の事情だろう。1999年時点では全国約2万2,200店あった書店は、
2014年時点では約1万3,700店へと減っている。紙だけには依存できない社会環境がある。
「書籍」定額サブスクリプションモデルの脅威
日本の読者が「そこそこのものがたくさんあれば満足できる属性」かどうかはわからない。それは、日本の「本好き」の熱量によって大きく変わるだろう。むしろ、出版社側がこの変化するビジネスモデルを好機ととらえるのかどうかによって出版という業界が大きく変わりそうになる。そう、出版社は版元である必要がもはやなく、電子書籍のプロデュースや電子書籍プロダクションでよいのである。生まれてきた時から、電子書籍で「本」を読む子供たちには、Web記事と本の違いは、単に、長い文章か短い文章か、どうかに見えることだろう。そう、「書籍」定額サブスクリプションモデルは、「書籍」という概念さえも変えてしまう脅威を秘めていると感じる。