アップルの「クラウド戦略」、第一章がここに始まった。

Toshiaki Kanda 2011年06月07日 火曜日
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2011年 06月06日、

WWDCでアップルはクラウド戦略を具体的なOSに組み込むことで新たな戦略を浮き彫りにした。

 

特徴は2つ。

 

アップルiCloud と iTunes Match だ。

 

iCloudは、年間99ドルだったmobile meのサービスを一気に無料にし、5GBまでのデータストレージを使用できる。

テキストデータであれば、5GBあれば、十分だが、KEYNOTEなどのデータとなるとちょっと不足かもしれない。どのiOSやMac端末からも自由に取り出せるというメリットを活かすための、「クラウド型USBメモリサイズ」と考えたほうが良いのかもしれない。

 

 

iTunes Match は、年間24.99ドルの有料サービスで、自分の持っているリッピングされた音楽データをアップルに「預ける」ことによって、どの端末から、自由に音楽類を視聴することができるサービスだ。

 

このサービスのすごいところは、「他人のふんどし(データ)で商売する」モデルだ。

ご存知のように、iTunes Storeで販売されている楽曲の大元は、アップルのサーバにある、世界でたったひとつの音源データだけだ。そのデータが各地の分散サーバに分散され、ネットを通じて、何百ものデュプリケートされたデータがダウンロードされている。

 

今度は、ユーザーが持っている個々のデジタルデータの差分を、寸分違わず同じ物であれば、世界でたったひとつの音源データにヒモづけするだけで、膨大な音楽データベースに、ユーザーの視聴行動習慣が付随されて蓄積される構図ではないだろうか?

 

しかも、その代金はユーザーがありがたがって、年間24.99ドル払ってくれる。

 

そのうち、その流れは、iTunes Storeで購入し、年間24.99ドル払って、管理してもらうという二重取りの構造となる。

 

これは過去の音楽市場的推測でいうと、いつでも借りて聴ける「年額制のレンタルレコード」という様相だ。

 

データは手元にないのだから、物質は、まったく所有していないのだ。いわば、曲を流通させる必要もない。ユーザーが好きな時に好きなだけ利用できるサービスを全世界で共有するという新たなクラウド時代のビジネスモデルが見え隠れしてきている。

 

アップルがこのように、一気にクラウド戦略をすすめるには、理由がある。

 

その理由は、アンドロイド陣営の存在だ。

 

ご存知のように、アップルは、唯一のOS、ハード、アプリ、サービスの四位一体を提供するクローズドな会社だ。

 

反対に、アンドロイドを提供するGoogleも、OS、若干のハード、アプリ、サービスの四位一体を提供するオープンな会社である。

 

約20年前の1995年。ウィンドウズ95が出荷された時に、先行していたアップルは、マイクロソフトのウィンドウズ陣営にGUI市場を席巻されてしまった苦い経験がある。

 

今、まさにアンドロイド陣営は、多彩なハードウェアとカスタマイズできるOSによって、モバイル市場を「ウィンドウズ95化」しているのだ。

 

そこで、アップルは、あの時とはまったくちがった戦略。

ユーザーのデータを抱え込むという、「クラウド戦略」で応戦するかまえとなったのである。

 

 

かつて、アップルとグーグルは、マイクロソフト帝国と戦う、同志的なつながりをもつジェダイでもあった。

 

しかし、もはやマイクロソフトが瀕死の大病で病んでいる間に、グーグルは株価というフォースのチカラのレバレッジを最大限に活かし、しかもフリー戦略によって圧倒的なサービスのグーグル生態系を築いている。

 

マイクロソフトが長年にわたり、民衆から徴税して配布してきたものを、グーグルは、一気に無料で分配した。当然マイクロソフトの市場経済は破綻する。リナックスのようにコンピュータに詳しい人でなくても、検索したり、メールをしたり、地図を見たり、ニュースを見たり、ドキュメントを共有したり、グーグルであれば可能となった。

 

そして、携帯OSを無償提供するというグーグルのアンドロイドOSによって、マイクロソフトのいたポジションは、完全にグーグルへと変化した。シンビアンOSなども、スマートフォン市場では、弱者になってしまった。唯一、ブラックベリーが独自の路線で存在する。

 

残念ながら、アップルのiOSをライセンスされている会社は、世界でひとつアップルだけだ。

 

アップル一社が独自のOSでアンドロイ陣営の多勢に無勢(?)と戦うためには、先見性だけでなく、ユーザーの抱え込みが必要だったのだ。

 

そこにアップルのクラウド戦略の第一章がこの秋にはじまろうとしている。

いや、開発者たちは、本日より、そのクラウドという機能を活かしたサービスを企画しはじめ、作りはじめたのだ。

 

アップルは、パソコンでIBMに敗れ、OSでマイクロソフトに敗れてきた。

しかし、瀕死になりながらも、脈々と流れる、人を惹きつけるチャームポイントを持った会社だ。

 

「悪には染まらない」という神としてのグーグル。気ままでユーザーのいうことを聞かずに自社の方針を天使のように導くアップル。

 

アンドロイドという神々と孤立無援の天使の戦いに目が離せない。

 

 
 

 


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