ザ・ビートルズ全曲バイブルと、ビートルズリマスター 2009年

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書棚を整理中に、2009年12月07日に日経BP出版センターから発売された、「ザ・ビートルズ全曲アルバム」を発掘した。
豪華本は常に、書棚の最下部で鎮座しており、なかなかこんな整理する時にしか見られることが少ない。
この本はなんといっても、レコーディングに関してのトリビアにあふれているガイドブックとしても重宝する。
もちろん、リマスター盤が登場する時に発売されたものだが、よくある海外本の翻訳権を獲得して出版されたのではなく、日本人による監修でこだわりがハンパないのだ。

当時の4チャンネルのマルチトラック レコーダーにどのように配分サれているとか、ステレオミックスの音の配置(ビートルズ中期まではモノラルが主でステレオはいわばオマケだった)。

また、2009年9月9日(水)は、リマスター盤でもステレオミックスとモノラルの2種類で発売されたことが特徴だ。なんといってもモノラル盤の音圧に衝撃を受けた。そうビートルズはモノラルの音で作られていたからだ。それがステレオの普及と共にステレオミックスを仕方がなくやりはじめた経緯がある。だから、なぜ、右と左がこんなことになっているの?という疑問がよくあった。しかし、このリマスター盤のステレオミックスによってビートルズをステレオで聞く意味もようやく出てきた。
しかし、長年、ステレオで中途半端なステレオミックスを聴き続けてきただけに、モノラル盤を現在のスピーカーからだけではなく、iPhoneやAppleTV経由のテレビのAVスピーカーから聞くというのも21世紀のモノラルとしてのいい経験ができる。
そして、ステレオミックスを、この「ザ・ビートルズ全曲バイブル」と一緒に聴きだすと、テイクの深さやバランスの配置の違いをよりいっそう楽しめることとなった。
この一冊でより深く、彼らの世界を探訪することができる。作り手としての苦労を感じることができる。

 

同じようにビートルズの楽譜も書棚をうめつくしていたが、電子書籍化してもらった。しかし、楽譜のようにページのあちらこちらへ移動したくなるような書籍と、現在の電子書籍では相性が悪い。

そこで便りになるのがこのアプリだ。ビートルズの歌詞とコードが全曲揃っている。しかも、生音の曲も若干入っている。その生音が本当に上手に再現されている。

プレイヤーの人ならば、このアプリもぜひ、参考にしてみてほしい。

これはそのリマスターの発売当時の「日刊デジクリ」のコラムだ。

2009年9月9日(水)24:00 全世界でビートルズのリマスターが発売された。ラジオでは、ずっとビートルズのリマスター盤がオンエアされる。

「アンソロジープロジェクト」の時のような新曲および、レアテイクではないが、ワクワクしている。パッケージをひもとき、ひととおりのギミックを楽しんで…。おそらく、ビートルズのパッケージ盤を購入するのは、これが最後になるのかもしれない…(いつも裏切られているが)。

いよいよ、CDをCD-ドライブに入れてみた…。いや、これがだめなんだ! この行為が音楽をダメにしている。いつからCDをPCにいれて、しかもiTunes経由のApple losslessの可逆圧縮音で、アップルのあの最低な音質のイヤフォンで、しかも電話(iPhone)で音楽を聞くようになってしまったんだろう…。ビートルズに失礼である!

「iTunes LP」での発売を期待していたので、今回は、「モノラル盤ボックス」を買いそびれてしまい、もはや高値となってしまっている。どうして、今回iTunesにビートルズが入らなかったのが不思議だ。わざわざ4人の写真まで使っていたのに…。

気分をとりなおして、ステレオ盤の開封の儀の後、CDステレオ…なんだか死語に近いので、CDコンポで聞くことにした。ONKYOのCDコンポでCDをかけるのも久しぶりだ。かつては、プリメインアンプはヤマハ、パワーアンプはサンスイ、スピーカーは三菱、針はナガオカとか。なけなしの新聞配達のバイト代が湯水のごとく消えていったものだ。その名残りはもはや部屋のどこにもない…。

あのLPレコードのジャケットサイズに、やはり意味があった。そのビートルズのレコードたちも阪神大震災の時に全員昇天してしまった。おごそかに紙からとりだし、スプレーをかけて埃を丁寧に抜き、虹色に輝くアセテートの香りを前にして、精神を統一して、針をゆっくりと落とす…。

レコード特有のあのパチパチした最初のノイズが、針から、アンプ、そしてスピーカーへ伝わっていく。あのパチパチ音がなくなってから、音楽も聴き方あっという間に変わってしまった気がする。特にビートルズはだ。

プリーズ・プリーズ・ミー

ファーストアルバム「PleasePlease me」より一曲目「One Two Three Four!」来た〜!! 音がクッキリ、スッキリ、こもっていた感がなくなっている。すごいもんだ。2トラックのしかも40年前の音源からここまで修復するなんて!

まるで、システィーナ礼拝堂の修復後のようだ。中学の美術の教科書で見たシスティーナ礼拝堂。茶色にくすんだ空は、絶妙な色使いであると美術の先生に教えられた。しかし、修復後に見た本物のシスティーナ礼拝堂の空の色は、スッキリとした真っ青の空色であった。絶賛されていた色は、実は、長年にわたりたまっていた煤や埃の色だったのだ。

しかし、あまりにも青々しい空は、ボクのイメージのシスティーナ礼拝堂ではなく、ハウステンボスやラスベガスのベネチアンホテルの天井画のように見えてしまった。

そう、ボクが小学生時代に聞いていたビートルズは、卓上ポータブルレコード(もちろんモノラル)、トランジスタラジオ。しばらくして、レコードが痛むのが嫌で、カセットテープレコーダーで取り直したものをいつも聞いていた。もちろんモノラルだった。

それがCDとなり、A面もB面も関係なくなった時から、本来の意図とは違った聴き方がされている。初期のビートルズは、トランジスタラジオの小径のスピーカーで、しかもモノラルでもメリハリが効くような音楽再生を意図してサウンドメイクされていたという。

それが、現代のiPodシステムサウンド時代に、蘇ってきたのである。澄んだクリーンな音に仕上がっている。人間の耳とは不思議なもので、しばらくそのリマスターで聞いてしまうと、旧盤と言われる音源が不要とさえ思い始めてしまうのだ。

しかし、あのくすんだ、コモっとした音のビートルズや、A面8割に対して、たまにB面2割というレコード盤を、ひっくり返すのが面倒くさい人の試聴パターンも、もうそこにはない。B面1曲目のビートルズの工夫(A面1曲目とは対照的なインパクトのある曲をB面1曲目に持ってくる)も、CD時代には、それは意味のないラインナップとなってしまった。

今回のリマスターの最大の特徴は、今までユニゾンで、ひとつに聞こえていたジョンとポールのメインのラインが、微妙に聞き分けられる点だ。すごい。ポールがジョンの声に似せて歌っていても、ポールの声質の輪郭がまるであぶり出しのように見え隠れしていいる。

Rickenbackerのギターのキラキラと輝いている音色は、新しい弦の2〜3日目の音が再現されている。Hofnerは相変わらずHofnerの音だが、Rickenbacker4001は、艶がある。ジョンの最初のアクセントの破裂音も見事だ。

これは、毎日1曲づつ分析していっても、1年ちかくかかる。1か月に1曲レビューすれば18年間も連載できるほどだ。その前に、このアルバムをもっといいシステム環境で聞きたくなる。しかも大音響で。この物欲が一番恐ろしい…。

SPIDER ZEROのおすすめ番組に「タモリ倶楽部」が録画されていて、音楽評論家の萩原健太氏が解説していた。見逃した番組をこのタイミングで見られるのもSPIDERの強みだ。しかも、番組は、旧盤とリマスター盤の比較だ。こんな番組は、タモリ倶楽部くらいでないと実現できなかっただろう。

Till there was you
ジョン・レノンのサイドギターの邪魔臭さがわかる。
Can’t buy me love
リンゴ・スターのリムの6連符がしっかりと聞こえている。
EightDaysWeek
ジョージのコーラスの声もしっかりと入ってきている。
Taxman
ポールのギター、イントロもソロもジョージではなくポールだという。

なるほど、言われてみてから聞き比べ、初めてその違いの「音」が見えてきた。まさに、こういうガイド役が欲しかった。リマスター盤の「音の違い」全曲ガイドもおそらく出版されるのではないだろうか。期待したい。

聞こえているのに聞こえていなかった音、それを言語で解説してもらってから聞くと聞こえてくるから不思議だ。それはどこかワインに似ている。味わっているのに、あとから、オレンジっぽい味しませんでしたか? といわれると、そういえば…このあたりに…という感覚に似ている。

また年齢によっても聞こえる音が違う。10代で聞いた「ホワイトアルバム」は難解な音だった。30を超えてから聞いたホワイトアルバムようやくわかった感があった。そして今、50をあと2年前にして聞くホワイトアルバム。大人の音が、同年代となり、さらに自分が年上となっていく。サザエさんのタラちゃんだった自分が、カツオとなり、今やマスオさんになっていく感覚だ。ビートルズも若者だった…。

さらに音楽をやる前と後も聞こえ方が違う。音楽をやる前は、三度のハモりでさえも(信じられないが)一緒に聞こえていた。音楽をやり始めてから、楽器のパートごとに聞き分けて聞くことができるようになった。コード進行やベースラインなども。しかし、あの音楽をやる前の、すべてが一緒にごちゃっと詰まった音にはもう聞こえない。「素人耳」とでもいうのだろうか…。

今度のリマスター盤は、そんなどうやって演奏しているんだろうか? という疑問には答えてくれるが、純粋に音を楽しむためのビートルズとは別の方向へ向かったような気がする。

どうせならば、64トラックに振り分けて、ジョージ・マーティンになったつもりで、各パートの音をミキシングさせてもらえるようなバージョンをボクが生きている間に出してほしいものだ。音楽パッケージ流通
がデジタルに完全移行すると、テクノロジーの進化をあわせて、再生するだけの音楽からミキシングのように、DJのように参加する音楽が求められると思う。ユーザーが毎年著作権料を払ってでも、リミックスしたいコンテンツというビジネスにはビートルズが一番ふさわしいと思っている。

その前に、ぜひ、モノラル盤も手に入れて、右からも左からも同じ音のごちゃっとした音のビートルズを、「素人耳」のつもりで聞いてみたい。きっと、中学時代のあの頃にもどって、ホウキを持って休み時間に歌って踊っているボクがいるかもしれない…。










 

 

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