『Web』は、永遠に続く巻物。
グーテンベルグの呪縛から解き放たれよう
https://www.bookscan.co.jp/interviewarticle/058/all#article_bottom
渋谷コネクティングドッツで、BOOKSCANさんに著者インタビューいただきました!
- 飛行機とか新幹線で一番読みますね。新幹線はまだいいのですが、飛行機って電子書籍は規制が結構厳しいですよね。そういうときには紙の本を読みます。電波を一切発生しないという認可が下りているような電子書籍があればいいですね。後はお風呂でもトイレでも読みたいんです。長風呂長トイレになりますけど。
- 僕は3ヶ月前には神宮前のシェアハウスに住んでいて、その前もシェアハウスでした。
シェアハウスぐらいが一番ちょうどいいのかもしれません。だから仕事場を何人かとシェアできたらなあと思い始めています。ライター同士で集まると、会社っぽくもなるしいいですよね。 - フリーランスでやっていると自分でなんでも調整がつくので、下手すると、気がついたら1週間くらい1歩も外に出ていないということもあるんです。「あれ、今日何曜日だっけ?」みたいな感じになってしまいます。次の仕事と仕事の間に出勤の義務もなければ、仕事自体もいつでもどこでも始めようと思えばできますし。だから基本的には体調が悪くなりますね。朝と夜の生活がバラバラになっちゃいますから。自分で時間を管理できないので、夜の6時になるとニュースがはじまって仕事が終わるみたいに、テレビが時計代わりですよね。
- 主に自宅のほうが多いのかな。iPadとKindleを使っていますね。今はKoboとAmazon待ちみたいな感じです。でもどうしてもモノクロって限定されるんですよね。だから僕はテーブルで読みたい。今度どこからか、24インチのAndroidが出るから、あれは欲しいなと思って。新聞をこうやって見ていた時のあの感じにしたいですね。それかAppleTVからテレビ画面にAir Playで出力できたりとかします。僕は本もPDFをAir Playにして大画面、55インチくらいで見ていますよ。
- これからは20ページで新刊本もありなんですよね。20ページの新刊本が85円で、10分で読めるような。もっと言うと電子書籍は、ページっていう概念が変わらないと本物じゃないような気がしますね。ページっていう概念に縛られているとグーテンベルグ以来の500年の歴史を引きずってしまうんですね。“Web”って永遠に続く巻物みたいな感じですよね。もともと縦の巻物だったんですけども、当時は回線のスピードが遅いから「次へ」「 次へ」っていうページ形式になってきた。今みたいに回線のスピードが上がって読み込みがある程度バッファが取れれば、延々とスクロールだけで読めると思うんですよね。もしかすると、自分の読む時間を何秒と設定すればそれで自動的に動いてくれるのもいい。
- 電子書籍になってくるとコピーアンドペーストも出来ますけども、本に線を引く感覚で、気になる部分に線を引いた瞬間クラウドに書籍の引用も全部載ったりするといいですよね。「著者」「読者」というんじゃなくて、クリエイティブな感覚、中間の編集者に近いような感覚で、自分が気になる部分をまとめて、自分だけの本をつくるようなものがあるといいですね。それを続けていくことによって、「そういえば」と思ったときに、自分のデータベースの中から、ブックマーキングしたものがずらっと表示されるとかね。そうすると、読んだ本をずらっと置いておいて、付せんを打って、しおりがわりになっていたりとかするものを探し出すより便利かなと思います。
- ニュージャージのエジソンのウェストオレンジ研究所っていうのがあるんですよ。そこは図書館の中にエジソンの机とベッドが置いてあるんです。そこで疲れたらエジソンはすぐ寝るんですよ。仕事場なんですけど、疲れたら寝て、起きて、図書館だから本があって、どの本にもエジソンのメモ書きがぎっしりなんですよ。だから研究所の人はみんなエジソンの、ここはなんとかだっていう情報をみんな共有できたんです。
当時は科学書が全部そろっている世界最高のライブラリーがエジソンの研究所で、みんなその本が読みたくて世界の天才たちが集まってきたんですよね。だからGoogleがエンジニアの最高峰を集めるのと同じように、エジソンの周りでは世界最高のリクルーティングができたんですよね。それと同時にエジソンがすべての科学誌を取り寄せてそこに解説をしてシェアしていくので、本を読むプラス研究所の所長が思っているイマジネーションやアイデアが共有できた。面白いですね。 - 『僕はビートルズ』っていう漫画なんですけども、『沈黙の艦隊』とかを書いているかわぐちかいじさんが書いていらっしゃるんですが、先週たまたま10巻まであるのを一気に漫画喫茶に入って読んだらハマっちゃったんです。話は単純で六本木でビートルズのコピーパンドのお店に出ている人たちは、ビートルズのコピーバンドとしては日本で一番うまいっていう人たちで50年前にタイムスリップしちゃうんです。ビートルズのデビュー前の世界に。それで、ビートルズのデビュー前に自分たちがその楽曲を発表しちゃうんですよ。面白いんです。
- 日本人はカバーが好きだから、まず電子書籍はそこからまず受け入れられないのかなと思います。本はカバーがなくても読めるのに、ハードカバーは表紙があって、帯があってしおりがある。紀伊國屋へ行くとさらにその本にカバーをつけてもらえたりとかするわけです。包み込んで大切にする気持ちがあるんでしょうね。
- 僕も自炊するときの本を殺す感覚があって、自分ではやりたくないなと思うんで、スキャン業者さんにお願いしますね。やっぱり自分で牛を殺して食えないよな、とか鶏を自分で絞めてそれは魚でも嫌なのに、みたいな。本なんて断裁できないよなあと思います。
- 人間が文字を発明していなかったら実は人間は滅びているらしいって脳科学者の方がおっしゃっているんですよね。なぜかというと記憶することが多すぎて脳がもっとでかくなっちゃって子宮の産道を赤ちゃんが通れなくなるっていう説があって、だから人類がこの頭の大きさでいられるのは、文字を起こして自分の脳の覚えておくバッファを全部書き起こしたからなんです。だから外脳というか文章をメモすることによって自分が忘れることができて、やっぱりそれは紙というものが安くなってきたことによって、そこまで至っているわけですよね。物を何らかの形で残すというのは、クロマニヨン人の壁画の時から残しているし、メソポタミアの時の象形文字なんかもそうだろうし。紙の発明があって、昔は源氏物語とか枕草子とか清少納言とかの時代って、紙が高いから誰かがスポンサーにならないと作家になれなかったんですよね。今は紙も庶民の手に入るから、メモやノートは誰でも取れるようになりましたね。
- 大事なのは中の文章じゃなくてタイトルと装丁と最初の頭サビですよね。最初にこの本はどういう本ですよというあらすじが勝負です。だから週刊誌の記事と同じように、中身2割タイトル8割みたいなことが起きてくるでしょうね。Yahooニュースみたいに13文字ですべてを語れないとダメだとか。そこの要素が変わってくる。
- 読み手が書き手を選ぶ時代ですね。昔からそうですが、いっときは書き手のランキングで読み手が選ばれていた時期があった。やっぱり日本人ってランキングが重視なんですよね。ランキングでビジネスも動いているし、だからみんながみんな大衆と呼ばれる妄想を意識して、自分の直感よりもデータが物語っている調査会社のデータで、市場規模がこれぐらいになるっていうそこだけの勝負で来ているんですよね
- 日本人は多様化しているっていうことを認めたがらない人種でもあると思うんですよね。例えばインド人とルームシェアしていると常識だろうと思っているところが常識じゃない。インド人ってカーストが高いと自分でお皿を洗わないんです。ほったらかしで、後の人のことを考えないんですよね。日本人だと自分の使ったものを自分で洗うのは当然だろうと思うんですけども、思わず僕が「常識」という言葉を使うと「おれのところではそういう常識じゃない」と言われる。常識なんていうものもグローバルで考えて行かないといけないんだと思いましたね。ただ、グローバルコモンセンスっていうのは実はないから戦争も起きたりとかするんですね。
- われわれはモノフォニック(同時に色々な音が出せず、一つの音しか出ない)な世界で生きてきているんですよね。モノフォニックな文化だからこそ研ぎ澄まされて、ひとつひとつがすごく深いんですよね。それでいて実は自分たちのオリジンってどこにもなくて中国からきたものだとかアメリカからパクってきたものだったりとかするんですけれど、歌舞伎と一緒で男性が女性を演じたほうが女性以上の女性観が描けるんですよね。だから日本人ってそういう芸の細やかさとかいろんなモノがあるわけなんですよね。
- 「次の問題」が電子書籍って絶対に起きるんです。回し読みが起きて、コピーの意識もなくクラウドで共有して、みんながDropboxに入れて読む。それは今の時代では違法ですけども、それよりもユーザーの方が先回りしてきていて、法律のほうが追いつかないっていう状況が未来は絶対有り得ると思うんです。
- ダウンロードが面倒くさいですよね。納品されるときに待たされるダウンロード。3G回線でダウンロードしているから。ひとつ提案なんですけども、スキャンした順番で送ってきてほしいんです。完成してどさっと送って来られるのが嫌なんです。もうできたものから送ってほしい。
- 本というのは、人間の存在のWikipediaだと思うんですね。過去作ってきたもののキュレーション(収集した情報を分類し、つなぎ合わせて新しい価値を持たせて共有すること)されたWikipediaといったほうがいいかもしれない。
- ハードディスクの容量がますます安くなって、自分で購入したものがWikipedia状態で検索可能になる。それを考えていくとあのWikipediaの便利さで本が読めるんですよね。それはプラットフォームが何になるのかわからないけども、自分の検索窓にたたきこめば自分の持っている本の何ページと何ページが関連していますという風にずらっと結果が出る。だから次にお願いしたいのは、スキャンだけじゃなくて文脈まで管理してもらえるといいですよね
- 新しいメディアが登場してから30年間くらいは本物になれないので、電子書籍の場合、今ここでもっと加速していくと、今生まれてきた子どもたちがアメリカの小学校に入学して、大学生になるころには6割は新しい産業に従事するんですよね。そういうふうに今言われているんです。それを考えていくと、今までの既得権益の商売を守るっていうことよりももっと新しいことを考えなければいけない。今は、カメラが出てきた時に似顔絵師の仕事がなくなると言われたときと一緒ですね。そのころ、カメラが出てきたんだから似顔絵書かなくていいだろうってことで、似顔絵師がカメラマンに転職したんですよね。でも似顔絵を描くっていう文化は残っています。テレビが出てきた時も、家で映画が見られるっていうのは、映画業界にとって戦々恐々だったって言うんですよね。でも映画とテレビはうまく住み分けができていますよね。今、映画はDVDに予告編だった時代からネットになって変わってきて、映画はネットでダウンロードとか見放題にされるものを作らないとダメとか、今また作り方が変わってきているんですよ。
- 21世紀のメディアのインターネットが、まだ20年です。あと10年かかって本当のインターネットのメディアが完成する。あと10年後にすべてのメディアが統合されてきたインターネットメディアというのが本当に登場すると思うんです。