Talk about NexTalk 〜ユビキタスとの出会いから、未来のIT戦略を指南〜に「ソーシャル・ネットワーキングが築く、リアルなネットワーク網」を寄稿しました。
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「童話に学ぶユビキタス・コミュニケーション学」「テクノロジーの祭典としての万国博覧会」「大いなる決断とリーダーシップのありかた」
2003年3月、米国でFriendSter という友達の友達を紹介するサイトが誕生した。いわゆる友達を誘って、その友達がまた友達を誘うという知人によるネットワークサイトである。米国では、出会い系と呼ばれるmach.com http://www.match.com/ などが、有料課金のビジネスモデルで成功するという事例があったが、これは知らない者同士の出会いではなく、すでに知っている人をネットワーク上でリンクするというサイトである。
なぜ、そのようなサイトが必要とされるのだろうか?知人を誘うことによって参加した知人が自分の最新情報を記入する。また、その情報はネットで万人に公開されるのではなく、知人の知人の そのまた知人といった限定された人間だけに公開されるというシステムがユニークだったからだ。
続々と登場してきたこれらのサイトは、単に出会いを求めている男女ではなく、日常やりとりしている知人によるリアルなネットワークをインターネット上で「可視化」させたという特徴を持っている。当然、メールによる連絡もとることができる。それもSPAMなどの広告に悩まされる電子メールではなく、だ。
世界は6人の知人ですべてつながるという理論の「Six Degrees」を証明するものとしてこれらのネットワークサービスは、「ソーシャル・ネットワーキング」と呼ばれるようになった。
しかし、便利さと引き換えに、どのソーシャルネットワークサービスに入れば良いのかということが今度は重要となってきた。そう、サイトの特徴づけやブランド化が必要なフェーズに入ってきたのである。
検索エンジンサイト大手のGoogle.comは、上場を計画し、最強の検索エンジン会社から、「Services & Tools」http://www.google.com/options/ によるインターネットの総合サービスを提供する会社になることを目指していた。「Services & Tools」とは「アドワーズ」と呼ばれる、検索された言葉に対して広告を表示するシステムやその他の開発ショウケースである。
開発エンジニアには、週の労働時間のうち、2割は個人で自主開発するプロジェクトに従事できるというルールがある。
2003年末、Googleの開発エンジニアの Orkut Buyukkokten 氏が個人のプロジェクトとして、開始したOrkutは、Googleの新サービスとしてではなく、非常にコアなネットユーザーの間でテスト公開されはじめたことによって話題となった。
それは、ネット業界での著名人たちがハブとなり、それぞれの友達に呼びかけたからだ。現Macromedia社を創業したMarcCanter氏 Lotus社の創業者Mitchell Kapor氏、ネオテニーの伊藤譲一氏らの知り合いたちが、Orkut.comに参加し、Googleが新サービスという話題が先行したことと、完全に知人からの招待がないと参加できないというプレミア観が、他の誰もが入れるソーシャル・ネットワークとの差別化となったのである。
テスト段階で、アクセスが集中したためにサーバーがダウンしたことも、黎明期のネットブランドとしては、「箔」がついたようだ。後日談だが、Orkut.comのサーバーは、なんとOrkut Buyukkokten 氏の自宅のADSL回線で接続されたプライベートサーバーで稼動していたということが、エンジニアの間でも話題となったようだ。
Orkut.com の招待状が日本人にも届きだすのに、そう時間はかからなかった。2月の中旬に広がりはじめ、現在では、約1万人の日本人在住者が参加している。世界でもまだ13万人という程度だから、大きな事象とは、まだまだ言えない。しかし、ネット上のコアな13万人は、新たなネットの現象を生み出しそうな予感を感じさせる。
すでに日本では、ネットエイジ社がGocoo http://www.gocoo.jp/ という「合コン」をテーマとした有料ソーシャルサービスを開始。イーマーキュリー社は、mixi http://mixi.jp/ 、個人サイトでは http://www.gree.jp/ というソーシャル・ネットワーキングサービスを日本語で提供するようになった。
Gocooでは出会い系を「合コン」という形式にすることによって、トラブルのリスクを回避し、mixiでは、RSSによって友達の日記の更新具合を告知することができる。Greeは、知人の紹介文を記載することによって、自分と知人との関係性を他の知人にも知らせることが可能となった。
今後もさらにこれらのサービスが普及していくことが考えられるが、一番のメリットは、知人たちが、更新した情報をリアルタイムに知ることができるということだ。また、blogなどによって知人のライフスタイルを知ることができたり、SPAMメールにも悩まされず、知人にアクセスすることができるようになる。
また、誕生日のお知らせ機能などがあれば、Amazon.comや rakuten.co.jpなどから購入できるEC機能やアフリエイトも含めて多彩な展開が期待できそうだ。
今まで、インターネットの世界では、情報発信ツールとしてのWebや メールマガジン、Blog はあったが、情報を受信するツールとしての機能はあまり提供されていなかった。どちらかといえば、ソーシャル・ネットワーキングは、情報を効率よく受信し、現在の知人の状況を俯瞰できるという新しい概念である。
そのバックエンドでは、マシン同士が頻繁にコミュニケーションをくりかえし、人間に適切な情報を提供していくという「ユビキタス・テクノロジー」の概念もしっかりと連携されていることはいうまでもない。
すでに、マイクロソフト社の2006年リリース予定の次世代ウインドウズ「Longhorn」に「wallop」というソーシャル・ネットワーキングサービスを念頭においたWeb Servicesが提供されるという。
http://www.research.microsoft.com/scg/
こちらは、すでに普及しているMSNメッセンジャーを主軸にすることによって、マイクロソフトのOSと密接したOS環境を提供しようとしている。
このソーシャル・ネットワーキングという新しい概念は、2004年のボクたちの仕事や生活に大きな影響を与えてくれることになりそうだ。