カストディとは何なんだ?

上場企業の大株主欄に、信託銀行やカストディ銀行がズラリと並ぶ。

「日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 〇〇万株 〇〇%」「日本カストディ銀行(信託口) ××万株 ××%」-。

上場企業の株主名簿には、大株主として、見慣れない金融機関名とともに「信託口」と表記されていることがある。カストディアン(資産管理金融機関)と呼ばれる金融機関が投資家に代わり、有価証券の保管や管理を行っているという意味だ。

□上場企業の発行済み株式の5%超を保有した場合、5日以内に大量保有報告書の財務局への提出を投資家に義務付けるいわゆる「5%ルール」がある。だが、カストディアンの場合、その裏にいる複数の実質株主の正体は明かされない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/cfe22bceaac81dd6731b996ef4899ee8b65d6a4d

カストディとは、金融機関が顧客の資産を安全に保管し、管理するサービスのことです。特に、銀行や証券会社などが提供することが多いです。

投資家に代わって有価証券の保管・管理などの業務を行う金融機関のこと。
国内の投資家が海外の有価証券を購入する場合、現地のカストディアンと契約し、当該有価証券の保管・管理だけでなく、元利金・配当金の代理受領や運用成績の管理、議決権行使などを広範囲に委託することが一般的となっています。

自国(現地)だけで業務する「サブ・カストディアン」と、全世界に業務展開し、世界各国のサブ・カストディアンと提携している「グローバル・カストディアン」があります。著名なグローバル・カストディアンとして、

バンク・オブ・ニューヨーク・メロン、

JPモルガン・チェース、

シティバンク、

ステート・ストリート・バンク&トラスト

などがあります。わが国のカストディアンは、

日本マスタートラスト信託銀行、

日本カストディ銀行 などです。

https://www.daiwa.jp/glossary/YST0268.html

 

■日本マスタートラスト信託銀行(Japan Trustee Services Bank, Ltd., JTSB)

 

日本マスタートラスト信託銀行(Japan Trustee Services Bank, Ltd., JTSB)は外資系ではありません。日本マスタートラスト信託銀行は、日本の大手金融機関である三井住友信託銀行(旧中央三井信託銀行)、三菱UFJ銀行(旧東京三菱銀行)、およびみずほ銀行(旧日本興業銀行)による共同出資で設立された銀行です。

出資者

設立当初の主要出資者は以下の日本の金融機関です:

  1. 三井住友信託銀行(旧中央三井信託銀行)
  2. 三菱UFJ銀行(旧東京三菱銀行)
  3. みずほ銀行(旧日本興業銀行)

これらの出資者はいずれも日本国内の大手金融グループに属しています。したがって、日本マスタートラスト信託銀行は、日本の金融機関が主要な出資者であり、外資系ではありません。設立以来、日本国内の信託業務およびカストディ業務の専門銀行として、日本の金融市場において重要な役割を果たしています。

具体的には、以下のような役割を果たします:

  1. 資産の保管: 株式や債券、不動産などの金融資産を安全に保管します。これにより、紛失や盗難のリスクを低減します。
  2. 資産の管理: 保管している資産に対する権利の管理や、配当金の受け取り、利息の計算、税金の手続きなどを行います。
  3. 取引の執行: 顧客の指示に基づいて、株式や債券の売買を行います。また、資産の移転や決済もサポートします。
  4. 報告: 定期的に資産の状況や取引の履歴を報告書として提供します。これにより、顧客は自身の資産の状況を正確に把握できます。

カストディサービスを利用することで、個人や企業は資産の管理や運用に伴う複雑な手続きをプロフェッショナルに任せることができ、安心して投資活動を行うことができます。また、資産の安全性も高まるため、長期的な資産保全にも寄与します。

日本カストディ銀行(Japan Custody Bank, Ltd., JCBL)

日本カストディ銀行(Japan Custody Bank, Ltd., JCBL)は外資系ではありません。日本カストディ銀行は、日本の大手金融機関である三菱UFJ信託銀行、みずほ信託銀行、そして日本マスタートラスト信託銀行によって共同出資されて設立された銀行です。

出資者

設立時の主要出資者は以下の日本の金融機関です:

  1. 三菱UFJ信託銀行
  2. みずほ信託銀行
  3. 日本マスタートラスト信託銀行

これらの出資者はいずれも日本国内の大手金融グループに属しています。日本カストディ銀行は、日本の金融機関が主要な出資者であり、外資系ではありません。設立以来、日本国内の資産管理およびカストディ業務を専門とする銀行として、日本の金融市場において重要な役割を果たしています。

カストディ銀行

カストディ銀行は、主に以下の役割を担っています:

  1. 資産の保管と管理:顧客の金融資産(株式、債券など)を安全に保管し、管理します。
  2. 取引の執行:顧客の指示に基づき、資産の売買や移転を行います。
  3. 報告:資産の状況や取引履歴を定期的に報告します。
  4. 配当や利息の受け取り:保管している資産に関する配当金や利息の受け取りを代行します。
  5. 税務対応:税金に関する手続きをサポートします。

信託銀行

信託銀行は、カストディ銀行の機能に加えて、以下のような信託業務を行います:

  1. 信託業務:顧客の資産(現金、不動産、有価証券など)を信託として預かり、目的に応じて管理・運用します。たとえば、遺産の管理や企業の年金基金の運用などです。
  2. 資産運用:信託された資産を運用し、収益を上げることを目的とします。これには、投資信託の設定・運用や不動産投資の運用などが含まれます。
  3. 遺産管理:遺言に基づく遺産の管理や分配を行います。
  4. 年金基金の管理:企業や団体の年金基金の運用・管理を行います。
  5. その他の信託サービス:教育資金の管理や、特定の目的のための信託など、多岐にわたるサービスを提供します。

主な違い

  1. 提供するサービスの範囲
    • カストディ銀行は主に資産の保管と管理を中心としたサービスを提供します。
    • 信託銀行はカストディ業務に加えて、信託としての資産管理・運用や遺産管理など、より広範なサービスを提供します。
  2. 業務の目的
    • カストディ銀行は、資産の安全な保管と取引の円滑な遂行を重視します。
    • 信託銀行は、信託契約に基づき、顧客の意向に沿った資産運用や特定の目的の達成を重視します。

まとめると、カストディ銀行は資産の保管と管理を専門とし、信託銀行はそれに加えて信託業務や資産運用など、より広範で多様なサービスを提供する金融機関です。

19世紀:カストディ業務の起源

  • 19世紀後半: カストディ業務の起源は19世紀後半のアメリカに遡ります。この時期、証券取引所の発展に伴い、証券の保管と取引決済の需要が高まりました。最初のカストディ業務は、証券を物理的に保管し、取引の決済を円滑にするためのものでした。

20世紀初頭:カストディ業務の発展

  • 1900年代初頭: 銀行がカストディ業務を本格的に提供し始めました。特に、大手銀行が資産の保管と管理を行う専門部署を設け、機関投資家や富裕層の資産を管理するようになりました。
  • 1920年代: この時期、ニューヨーク証券取引所(NYSE)がカストディ業務を正式に導入し、証券取引の効率化と安全性を高めました。

20世紀後半:技術革新とグローバル化

  • 1960年代-1970年代: 技術の進歩により、カストディ業務は大きく変化しました。コンピュータの導入により、資産の管理と取引決済が迅速かつ正確に行われるようになりました。
  • 1980年代-1990年代: グローバル金融市場の発展に伴い、カストディ銀行は国際的な資産管理サービスを提供するようになりました。クロスボーダー取引の増加に対応するため、多国籍企業や機関投資家向けのサービスが拡充されました。

21世紀:高度なサービスと規制強化

  • 2000年代以降: カストディ銀行は、単なる資産の保管・管理に留まらず、リスク管理、規制対応、報告業務など、包括的なサービスを提供するようになりました。また、金融危機後の規制強化により、カストディ業務の重要性が一層増しました。

主要なカストディ銀行

  • アメリカ: The Bank of New York Mellon (BNY Mellon)、J.P. Morgan Chase、State Street Corporationなどが代表的です。
  • ヨーロッパ: BNP Paribas、Société Générale、HSBCなどが主要なカストディ業務を提供しています。
  • アジア: 三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャルグループなどがカストディ業務を展開しています。

まとめ

カストディ銀行の歴史は、金融市場の発展と技術革新に密接に関連しています。19世紀後半に始まり、20世紀を通じて発展し、21世紀には高度な資産管理サービスを提供する重要な金融機関として進化しました。これにより、グローバルな金融市場における取引の安全性と効率性が向上しました。

 

信託の歴史

信託の概念自体は古く、ローマ時代や中世のヨーロッパにさかのぼります。当時、土地所有者が自身の財産を後世に安全に引き継ぐために信託という形態が利用されていました。特に、土地や資産の管理を信頼できる第三者に任せることで、遺言者の意志に従った管理や分配が行われました。

信託銀行の誕生

近代的な信託銀行は、19世紀末から20世紀初頭にかけて、アメリカやヨーロッパで発展しました。初期の信託銀行は以下のようなサービスを提供していました:

  1. 遺言信託:遺言者の遺産を管理し、遺言に基づいて分配するサービス。
  2. 個人信託:個人の資産を信託形式で管理し、指定された目的(例えば、教育資金や慈善事業)に使用するサービス。
  3. 法人信託:企業の年金基金や財務管理など、法人向けの信託サービス。

遺言信託は信託業務の重要な部分であり、信託銀行が提供する主要なサービスの一つでした。このため、信託銀行の発展には遺言サービスが深く関与しており、遺言信託のニーズが信託銀行の設立と成長を促進しました。

まとめ

信託銀行は遺言サービスから直接誕生したわけではありませんが、遺言信託は信託業務の重要な一部であり、その発展に大きく寄与しました。信託銀行は、遺言信託を含む様々な信託業務を通じて、顧客の資産管理と運用を行う金融機関として発展してきました。

 

 

■信託銀行、カストディ銀行、投資銀行との違い

 

以下の表は、信託銀行、カストディ銀行、および投資銀行の違いを示しています。

項目 信託銀行 カストディ銀行 投資銀行
主な機能 資産管理、信託業務、遺産管理 資産の保管と管理、取引決済 資本市場取引の仲介、M&A、IPO支援
提供するサービス 信託サービス(資産運用、遺産管理)、年金信託、資産管理、受託者サービス 資産の保管・管理、配当金・利息の受け取り、取引決済 企業の資金調達支援、M&Aアドバイザリー、株式や債券の引受け
顧客層 個人投資家、企業、非営利団体 機関投資家、ファンドマネージャー 企業、政府機関、機関投資家
主な収益源 信託報酬、資産運用手数料 保管料、管理手数料、取引手数料 引受手数料、アドバイザリー手数料、トレーディング収益
規制 銀行法、信託業法 銀行法、証券取引法 証券取引法、金融規制法
設立目的 顧客の資産保護と運用 資産の安全な保管と取引決済の効率化 企業の資本調達支援と戦略的取引支援
代表的な企業 三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行 日本マスタートラスト信託銀行、三菱UFJ信託銀行 ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、J.P.モルガン

まとめ

  • 信託銀行は、主に資産管理と信託業務を提供し、顧客の資産を信託として管理・運用します。
  • カストディ銀行は、金融資産の安全な保管と取引決済の効率化を目的とし、資産の保管・管理を専門に行います。
  • 投資銀行は、企業の資本調達やM&Aの仲介、IPO支援など、資本市場での取引を専門に行い、企業の戦略的な金融取引を支援します。

この表を参考に、各種銀行の役割と提供するサービスの違いを理解することができます。

投資銀行は、資本市場での取引を仲介し、企業の資金調達やM&A(合併・買収)などの戦略的取引を支援する金融機関です。以下に、世界的に有名な投資銀行を挙げます。

■投資銀行の歴史

投資銀行の歴史は、金融市場の発展とともに長い歴史を持ち、多様な変化を経てきました。以下にその主要な歴史的発展をまとめます。

初期の起源

  • 中世ヨーロッパ: 初期の投資銀行の起源は中世ヨーロッパの商人銀行に遡ります。これらの商人銀行は、商業活動の資金を調達し、国際貿易を促進するために資本を供給していました。

18世紀-19世紀:近代投資銀行の誕生

  • 18世紀: ヨーロッパの主要な商人銀行が、政府や企業に対する融資や債券発行の引き受けを行うようになりました。ロスチャイルド家やベアリング家などが代表的です。
  • 19世紀初頭: アメリカにおいて、モルガン家やリーマン・ブラザーズなどの家族経営の銀行が、鉄道や工業の発展を資金面で支援するようになりました。

19世紀後半:現代的な投資銀行の形成

  • 19世紀後半: アメリカでは、J.P.モルガンが金融界で支配的な地位を築き、企業の合併や大型プロジェクトの資金調達を行いました。この時期に、現代的な投資銀行の基礎が築かれました。

20世紀前半:規制と拡大

  • 1930年代: 世界大恐慌後、アメリカではグラス・スティーガル法が制定され、商業銀行と投資銀行の分離が強制されました。これにより、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの純粋な投資銀行が成立しました。
  • 第二次世界大戦後: 経済復興に伴い、投資銀行は企業の資金調達、合併・買収(M&A)、国際取引の仲介を活発に行うようになりました。

20世紀後半:グローバル化と革新

  • 1980年代: デリバティブ(金融派生商品)の登場と金融市場の自由化により、投資銀行の役割が拡大し、国際的な金融市場での影響力が強まりました。
  • 1990年代: ITバブルやインターネットの普及に伴い、投資銀行は新興企業のIPO(新規株式公開)を積極的に支援しました。

21世紀:危機と再編

  • 2000年代初頭: 世界的な金融危機が発生し、リーマン・ブラザーズの破綻などにより投資銀行業界は大きな変革を迫られました。多くの投資銀行が合併や再編を経験しました。
  • 2010年代以降: 金融危機後の規制強化に対応しながら、投資銀行はデジタル技術を活用した新しいサービスや、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資などの新たな分野に進出しました。

主要な投資銀行の歴史的イベント

  • ゴールドマン・サックス: 1869年設立。1929年の大恐慌を乗り越え、1999年のグラス・スティーガル法廃止後に商業銀行業務を再開。
  • モルガン・スタンレー: 1935年設立。1980年代のデリバティブ市場の発展に貢献。
  • J.P.モルガン: 1799年設立。多くの大型M&Aを手掛け、グローバル金融市場での影響力を拡大。

まとめ

投資銀行の歴史は、中世ヨーロッパの商人銀行に始まり、19世紀の産業革命とともに発展し、20世紀の金融市場の規制と拡大を経て、21世紀の金融危機と再編の中で進化してきました。今日では、デジタル技術や新しい投資分野に対応することで、引き続き重要な役割を果たしています。

アメリカの有名な投資銀行

  1. Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)
    • 設立年:1869年
    • 本社:ニューヨーク
    • 特徴:世界有数の投資銀行で、資本市場、M&A、資産管理など幅広い金融サービスを提供。
  2. Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)
    • 設立年:1935年
    • 本社:ニューヨーク
    • 特徴:投資銀行業務、証券取引、資産管理に強みを持つ。
  3. J.P. Morgan(ジェーピー・モルガン)
    • 設立年:1799年
    • 本社:ニューヨーク
    • 特徴:商業銀行業務と投資銀行業務を融合し、グローバルにサービスを展開。
  4. Bank of America Merrill Lynch(バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ)
    • 設立年:2009年(Bank of AmericaがMerrill Lynchを買収)
    • 本社:ニューヨーク
    • 特徴:M&A、資本市場、リサーチなど多岐にわたる金融サービスを提供。
  5. Citigroup(シティグループ)
    • 設立年:1812年
    • 本社:ニューヨーク
    • 特徴:広範な銀行業務を提供し、特にグローバル市場での影響力が強い。

ヨーロッパの有名な投資銀行

  1. Barclays(バークレイズ)
    • 設立年:1690年
    • 本社:ロンドン
    • 特徴:投資銀行業務、商業銀行業務、資産管理を提供し、グローバルに展開。
  2. Credit Suisse(クレディ・スイス)
    • 設立年:1856年
    • 本社:チューリッヒ
    • 特徴:投資銀行業務、資産管理に強みを持ち、グローバルにサービスを提供。
  3. Deutsche Bank(ドイツ銀行)
    • 設立年:1870年
    • 本社:フランクフルト
    • 特徴:投資銀行業務、商業銀行業務、資産管理を提供し、グローバルに展開。
  4. UBS(UBSグループ)
    • 設立年:1862年
    • 本社:チューリッヒ
    • 特徴:投資銀行業務、資産管理、グローバルなネットワークを持つ。
  5. BNP Paribas(BNPパリバ)
    • 設立年:1848年
    • 本社:パリ
    • 特徴:投資銀行業務、商業銀行業務、資産管理を提供し、欧州を中心にグローバルに展開。

アジアの有名な投資銀行

  1. Nomura Holdings(野村ホールディングス)
    • 設立年:1925年
    • 本社:東京
    • 特徴:アジアを代表する投資銀行で、グローバルにM&A、資本市場、リサーチなどのサービスを提供。
  2. Daiwa Securities Group(大和証券グループ)
    • 設立年:1902年
    • 本社:東京
    • 特徴:投資銀行業務、証券取引、資産管理を提供し、アジア地域に強みを持つ。

まとめ

これらの投資銀行は、資本市場での取引仲介や企業の戦略的取引の支援において、世界的に重要な役割を果たしています。それぞれが異なる強みと地域的な影響力を持ち、グローバルな金融市場で活躍しています。

 

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