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JR西日本の企業体質

http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1135514/detail?rd

【PJニュース 05月09日】− JR西日本の事故は、いろんな意味で考えぶかい事故だと思う。ボクはその事故の話を、新神戸行きの新幹線車内で知った。本来であれば「亡くなった方々に心よりご冥福をお祈り申し上げます」という文面からスタートすべきであろう。しかし、JR西日本の「心よりのご冥福」の軽々しい乱用にこのコトバにまでも辟易としてきた。

 107人もの利用客が、突然、企業利益の前に犠牲になってしまった事ばかりに、日本中、いやメディア中が感情的に報道しているが、問題はその死者の数ではない。連日、TVではCGやイラスト、さらには再現ドラマ、遺族の人生物語まで繰り広げられて報道されている。JR西の社長が謝罪に向かった家庭での、遺族のヒステリックな罵声までもがテレビで放送される。確かに事故の悲惨さを報道する姿勢は理解できる。しかし、すべての遺族が悲しみをそのように表現されているわけではない。ぶつけようのない悲しみを噛み締めている遺族も非常に多いと思う。

 もうこれは、遺族に対しての気持ちは「保障」で表現する手段しかないのだ。罵声をいくらJRに浴びせても尊い命は戻ってこない。記者会見では、記者があまりの対応のひどさにブチ切れて罵声を飛ばす。困惑するJR西日本の幹部のクローズアップ。「逃走したJR社員」などの見出しも新聞を飾る。果たしてそれは「逃走」なのだろうか?

 ボクは日航機事故にキャンセル待ちで並んでいたことによって、機上の人にならずで一命を取りとめたが、申し訳ないが、一度も御巣鷹に慰霊に行ったことはない。阪神大震災の時には、数人を瓦礫から助けたが、締め切りがあったので、その場を離れた。人から「冷血人間」と呼ばれたとしたら、「自分がその立場だったらできるの?」と反対に問い正したい。

 きっとJRの車両にも警察や機動隊や病院勤務、自治体、政治関係の人がいたかもしれない。しかし、すべての人が救助のボランティアになるとは限らない。テレビで報道やコメントする人たちもオンエアー直前で、何人が救出ボランティアができるのだろうか?現場からは、ここぞとばかりに携帯電話でレポートしていることだろう。

 あなたが経営者であったとしよう。社員から連絡があって、大事なプレゼン当日に、出勤に向かっている列車が脱線してしまったので、救助のために会社を今日は休みたいというと、あなたは心から快諾できるだろか?JR西日本を、心から罵倒できるだけの権利を持つ人はそれほどいないのではないだろうか?(もちろんJR西日本を擁護しているのではない)。

 報道ステーションの「ボーリング宴会」のスクープが報道されてからは、さらに報道は過熱度をあげた。報道ステーションの番組では、ボーリング宴会の事実を確認した上でロケで編集し、22時のオンエアーの冒頭に放送した。記者会見上での他メディアも、そのスクープのみに話題が集まる。事故の問題点の追求よりも、ボーリングをしていた事に対しての企業体質に興味が集まった。

 報道するならば、その「ボーリング宴会」が確認できた時点でニュースで報道すべきではないだろうか?視聴率アップを狙う完全スクープ報道の形態は、JR西日本の企業体質とボクはなんら変わらないと思う。(今回の事故のニュースはVAIOのTypeXで全番組録画によって、同時刻の多局の報道内容を確認することができた)

 今回の事故には、少し冷静になる必要があるのではないだろうか?企業体質は、JR西日本だけの問題ではない。命を預かる「日本航空」、「三菱ふそう」…。いろんな不祥事が今まで露呈した時だけ槍玉にあがるが、企業体質は根本的にはなんら改善されていないのではないだろうか?命を託して移動する手段を提供する企業に対して、なんらかのコーポレート・ガバナンスに問題があるのは明確である。

 利益最優先は企業であるから仕方がないことだ。しかし、人命と比較してどうかという点は軽く見られがちである。鉄道に勤務する人ならば、不慮の事故、踏み切り事故、飛び込み自殺に慣れきってしまっている。 2003年の自殺者は、3万4000人。そのうちの何割かがJRに飛び込んでいる。

 JR西労組では、「JRが(自殺が)多い。時々、阪急か近鉄に飛び込んでくれたらいいのに」という発言までしていた。そういう体質のある列車を、我々は日々利用しているのだ。JR西日本にとっては、人が死ぬということは、すでに「日常」なのである。JRにとって死者は、普段から迷惑な存在という認識があるのかもしれない。今回の「事故」で人の死に対して JRも認識が変わることを願う。

 しかし、「責任転嫁」や「いんぺい工作」は完全に企業体質が生んだものだ。
ボクたちは、いまやJR西日本に「あきれている」場合ではない。JR西日本のような企業体質は、この社会に、広くはびこっっている。医療や食品、酒、タハコの世界では、もっとたくさんの死者を生んでいる。

 死因の12%の理由が喫煙と報告されているが、6割も税金をかけている国家の体質はもっと問題なのかもしれない。自分の命は自分でもっと管理すべきだ。乗り物を乗る際は、命を託す覚悟を決めて乗ることも大事かと思う。【了】

パブリック・ジャーナリスト 神田敏晶【東京都】