異端者ホリエモンをそろそろ受け入れよう

今、一番視聴率の取れる男は、なんといっても、ホリエモンこと、ライブドアの堀江貴文社長だろう。これは日本全国の誰もが認めることだ。

昨年の今ごろ、誰もこんな事態になっているとは思わなかった。KNN Nightのゲストに、飯野賢ニ氏と一緒に出演したり、企業のバイアウトセミナーなどを共催していた頃、ボク自身も(たぶん彼自身も)彼にもう少し「華」があれば、彼は、売りやすくなると考えていた。

さわやかに笑うでもなく、ハキハキしゃべるでもなく、どちらかというと、朴訥とした粗野なタイプだった。しかし、今日の彼は、TVのどの番組に出ても、自分のいいたいことをいつでも伝えられるズバ抜けたタイミングによるコミュニケーション能力を発揮している。どの年代にどの属性にターゲットとしているかを把握して、常に話題の変化球を投げかけている。よほど、メディアを研究したか、連日のメディア出演で育てられたかだ。

いったい、いつの時代にTVのバラエティ番組で、「転換社債」や「TOB」、「敵対的買収」が話題になったことがあっただろうか? ITの未来やベンチャー経営を経済番組以外で、誰にもわかるように説明してくれるキャラクターがいただろうか?

さらに、結果として今年のプロ野球を面白くした張本人は、堀江社長であることも誰もが認めることであろう。そして、今度は、TV業界を本当に面白くしてしまいそうだ。

ボクはフジテレビの「とくダネ!」を毎日録画して見るほどの小倉キャスターのファンでもある。彼の個人的なコメントにいつも、ボクの気持ちを代弁していただいている。しかし、今回は残念ながら、小倉キャスターでさえ、ホリエモンに関して言及することができなくなっている。

「きっかけはフジテレビ」「おもしろくなければTVじゃない」といっていたフジテレビは、まずいことにはふたをする普通のテレビ局になってしまっている。
不祥事があったNHKのように公共電波を活用して、もっとスタンスをアピールするべきだろう。それもせずにただ、他の情報だけを提供している。がっかりだ。つまらない…。広告主に対して、言い訳が立つのだろうか?

政財界が、こぞってホリエモンを批判しているようだ。電波は公共のものとか、金で何でも買える思うのは大間違いだなどと寝ぼけたことを言っている。

公共の電波を使ってどれだけ有益な政治放送をしているのか? 「人の心も金で買える」というホリエモンのレトリックを実際に本人の口から聞いたのか?

今の政財界、TV業界、プロ野球業界、すべてが、バカなオトナの世界になっている。立ち上がれ! 起業家といいいながら、調子に乗ったガキが、たった一人立ち上がるとつぶしにかかっている。本当に構造改革に挑んでいるのはホリエモンただ一人ではないのだろうかと思ってしまう。

ホリエモンの今回の時間外取引に問題があるとするならば、そんな買い方で買えてしまう制度が問題であり、非難する側こそが問題だろう。ホリエモンも言われのない言い方は、名誉毀損で欧米流で訴訟すればいい。変に、常識的なやり方に迎合すればするほどホリエモンの非常識戦略がゆらいでしまう。

ベンチャーにとって、ビジネスで守るべきものは、ルールであり、マナーではない。特にベンチャー企業の場合は、体裁よりも、スピーディーに結果を出さなければ意味がないのだ。鹿内一族のシェアホルダーをなんとか姑息な手段で調整中の間に、スキを見せたフジサンケイグループ側が悪いのではないだろうか?

個人的にはなんとか、ホリエモンにがんばってもらいニッポン放送を手中にいれ、インターネットとラジオのシナジーを活かし、ネットとラジオ放送の未来を手にしてほしい。ニッポン放送が手中になると、もれなくポニーキャニオン(ニッポン放送が56%株所有)というブランドもついてくる。もしかるすると横浜ベイスターズ所有(ニッポン放送30.8%株所有)という展望も開けてくる。そこまできてから、ホリエモンがどのように改革するのかを見届けたほうがますます面白くなるだろう。

ホリエモンのリビドーは、「欲」の塊でやっているのではなく、本当に面白いインターネットの世界を実現できるチャンスに純粋に賭けているだけだ。
「skype」の提携、「ネットシネマ」の配信、DVDレンタル事業の「ぽすれん」「ブログサービス」の「ライブドアブログ」、「未来検索」…。彼の個人資産よりも、これらの面白いネットサービスを展開できる立場がボクは、うらやましい。

かつての西和彦氏のように、いろんなところから儲け話はとめどもなく集まる。リーマンからの資金調達もその話のひとつだ。

これからは、ホリエモンのようなホットなマインドを持ったクールな経営者が増えてきそうだ。その風穴をあちらこちらに空けている。すでに、この話題が終わったあとの話題のネタも仕込んでいることだろう。

今の日本に一番欠けているのは、アグレッシブな姿勢だ。現状に不満を抱きながら、かといって改革を望むべくでもないという中途半端な現状状維持だ。これが一番、タチが悪い。日本のメディアが「日本語」によって守られていると思っている間に世界はますます変化しているのに…。

敵対的買収が非常識というのは、もうすでに頭が北朝鮮化しているとしか思えない。ジョンイル将軍様がすべて正しいという国民とどこがちがうのだろうか?

マスメディアはこぞって、「北朝鮮」と「ホリエモン」と「堤王国」と「少年事件」しか取り上げていない。こんな選択肢の少ない、ニュースの時代ももうたくさんだ。

「ホリエモン」が取り上げられるのも、ニュースがあるからだ。事件は仕込めないが、彼のニュースは、いくつも仕込める。ホリエモンがそろそろ、ジャパネットたかたのように次にTV出演をサポートしてくれる人を用意しておくのも今からだ。バラエティ番組で学ぶべきことはもうないはずだ。

ホリエモンは、これからは「個人の時代」だという。個人がメディアを活用していろんなパフォーマンスを発揮できる時代が来ると力説する。これにはもっと具体的な説明がないと、一般人は理解できないだろう。いや、具体的なサービスが開始されて、TV業界がはじめて、気づくはずだろう。

CMによる広告収入以外でビジネスのできるおもしろい世界初のTV局の開局までには、まだまだ、ホリエモンにがんばってもらわないといけない。

異端児であるホリエモンを「時の人」にするのではなく、異端児を受け入れられる寛容なオトナ社会にニッポンが成長しなければならない。

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