Management
時給を上げるよりも、離職率を減らす方法 人は時給よりも、日々学ぶことがあるということのほうが喜びが大きい。
これは、アルバイトや派遣を使っている企業にとっては重要な問題。
時給がすべてという概念よりも、モチベーションやアチーブメントへと教育費をかけるほうが経営的には数倍のレバレッジが機能する。
「いくら美味しいものを提供しても、 お店で不愉快な思いをしたら、 そこには二度と行きたくないですよね」
そこで、 原田社長はクルーと呼ばれる 17 万人のアルバイトのモチベーションをあげることこそ、 美味しいハンバーガーをお客さんに提供することになり、 ひいてはそれが売上増に繋がると考えてスタッフの教育に取り組んだといいます。その結果、 数年前までは 1 年間でクルー 100 人のうち 70 人が離職していたのが、 2009 年はその数字が 47 人まで減ったといいます。 これは世界中のマクドナルドの中でも極めて低い数字だといいます。
「クルーへの教育費を社員同等にかけることにしました。 時給はまったく上げていないのに離職率は下がっています。 人は時給よりも日々学ぶことがあるということの方が喜びが大きいということです」
同時に店長の満足度があがらなかったら、 クルーの満足度もあがるはずがないという視点に立ち、 店長にアンケートを配って、 定期的に満足度を調査しているといいます。
店長のみなし管理職問題がメディアで取り上げられ、 店長をいかにもこき使っているような悪いイメージが広がりましたが、 そこにも強い問題意識を持ち、 非常に早いスピードで改善されています。
「日本マクドナルドは若者を育てるエクセレントカンパニーを目指したいと思います。特に就職に困っている、 優秀な高卒の子達をもっと採用したいと思いますね」
現場スタッフの心理を分析し、 目配りの結果、 コストは変わらないままで離職率が低下しています。 その結果、 勤務経験が長いスタッフが増えて店舗運営は着実に向上しているのです。
ヒット商品を生み出すということは大変難しいことです。 ましてや、 ますます顧客ニーズの多様化が進む中、 多くの消費者が喜びを感じる要素をひとつの商品に集約させようとすると、 出来あがってくる商品は、 残念ながら顧客ニーズからは離れたものになるというジレンマがマーケティングにはあります。
意見を集めれば集めるほど見えてこなくなるということです。 そんな中、 なぜ今回クォーターパウンダーをヒットさせることができたのかという疑問に対して、 原田社長の答えはじつにシンプルで、 目から鱗が落ちる感覚でした。
「世の中が健康志向になって、 自然食や低カロリーの商品が求められています。 確かにそのとおりなのですが、 普段そのような意識を持っている人でも、 マクドナルドに来た時には、 思い切りジャンクなものを食べたいのだと思うんですね」
まさにその通り、 と手を打ちました。 自分がマクドナルドに行くときの心境にぴったりでした。「ダイエットブームもあって、 一時期、 マクドナルドでもサラダを出したことがあります。 でも、 普段はサラダが好きな人でも、 マクドナルドでサラダを食べたいと思うか、 というとそうではないんです」
世の中のブームや定説に流されず、 自社の商品を求める時の顧客の心理をきめ細やかに分析しているのが非常に面白く、 それが今の好業績に繋がっていると感じました。「経営はサイエンスとサイコロジーですよ」
今、 Big America シリーズが好調です。ランチ割引でセット価格 740 円という高額、約 600 キロカロリー (ご飯 3 杯分) というメタボな感じですが、 テキサスバーガー、ニューヨークバーガー、 ハワイアンバーガー、 そして現在のカリフォルニアバーガーと、 熱狂的なファンを獲得しています。しかし、 それに対しても緊張感あるコメントをしています。「Big America シリーズは最初の段階で売り切れがありました。 これはまったくのペナルティです。
ファストフードで数量限定、売り切れゴメンなどは恥なのです。 1 日売上が 5 ポイント下がっただけで1億円違ってくるんです。 だから少しも油断できません。 毎日、 高速道路を 300 キロで走っているような気持ちで経営しています」
http://www.takarabe-hrj.co.jp/weekly/No671.pdf