シェアリング・エコノミーは、安くサービスが利用できるというメリットがある一方、コスト競争で、既存の産業で働く人の仕事が脅かされるという指摘もあります。アメリカの雇用に詳しい、労働政策研究・研修機構の山崎憲主任調査員は、「シェアリング・エコノミーが拡大しているアメリカやヨーロッパでは、コスト引き下げ競争が止まらなくなり、従来の雇用が破壊されるとして社会問題になっているケースもある」と話します。さらに、シェアリング・エコノミーで収入を得る人が増えた場合、企業に雇用される労働者を中心とした今の社会保障の制度が揺らぐ可能性があると指摘します。山崎さんは、「シェアリングエコノミーで収入を得る人は、自営業者のような位置づけになるため、アメリカでは年金や雇用保険など社会保障制度の枠組みから外れ、将来の生活が不安定な人が増えていると指摘されている。日本で導入する場合、働く人がこれまでの社会保障を受けられるように制度を設計していく必要がある」と話しています。インターネットを介して個人と個人を直接つなぐシェアリング・エコノミーは、新しい価値と多様な働き方をもたらす可能性がある一方、コスト競争が激しくなり、働く人の生活に影響が出るおそれもあります。日本での導入の可能性が見えてきたライドシェア。メリットとデメリットを十分に議論することが必要だと思いました。