ハイビジョン時代になって見える事

32インチの薄型ハイビジョンテレビが我が家にやってきてから困っていることがある。
今までの映像ソースのすべてが汚く写ってしまうのである。

薄型テレビはもちろん「フルハイビジョン」ではなく、普通の「ハイビジョン」であるが、今までのブラウン管で見ていた地上波アナログと地上波デジタルの画質の差は雲泥の差である。無料で見られるテレビがこれほどまでに美しいとは!!と感激するものの、テレビに写しだされる文字テロップのジャギーや、にじみが気になって仕方がない。アンチエイリアスをかけるとかもっとキレイにならないものだろうか?ブルースクリーンのバーチャルスタジオ画像なんて見るに値しないものになってしまった。

さらにコマーシャルの画質の汚さがとても気になる。特にハイビジョンを宣伝するビデオやテレビのコマーシャルでさえも汚いのだから仕方がない。ハイビジョン製品をPRするコマーシャルの画質が汚くてどうするんだ!!。

当然、コマーシャルを納品しているのが、テープベースであるから、放送用のマスターテープや、ハードディスクにデジタルダビングをしていても僅かな劣化が発生している。その差異を我が家にやってきた1インチ3000円以下のバイデザイン社の液晶モニターでさえも映し出してしまうという恐ろしいハイビジョン時代に突入している。

さらに、たくさんあるコレクションしているDVD作品を見たときに、ブロックノイズ化しているシーンが目立つようになった。32インチでこれだから、当初計画していた60インチのフルハイビジョンのモニターであれば、汚いDVDのMPEG2画像がさらに拡大されてしまったことだろう。(60インチサイズは来年のさらに値段が落ちた頃を狙うことにした)。

とどめが、自分のビデオテープである。DVビデオカメラで撮影した映像がもう、見るに耐えない画質として写ってしまっている。今までのNTSCのモニターであれば、何も気にならなかった画質なのに…。

一瞬、この画質の酷さはバイデザイン社のモニターが原因?と思ったが、生放送の地上波デジタル番組はキレイなので、それではなかった。もう、ボクはビデオカメラでさえもハイビジョンにしなければいけない環境の呪縛におちいってしまったのである。

ビデオジャーナリストという職業柄、ハイビジョンカメラを購入しようとしているが、もうチョイスがなさすぎて非常に困っている。ボクは機動性を優先して、いつも小型のコンシューマー製品を長年愛用している。ハードディスクやDVD、SDカードに記録できるようなカメラが増えているが、ハイビジョンで記録できる民生用のテープレスカメラは、三洋のザクティ以外、まだ存在していない。…というか、これから数年でそんな世界になるだろうが、今は存在していない。

キヤノンのiVIS HV10
http://cweb.canon.jp/ivis/hv10/index.html
が発売となった。長年愛用してきたソニーのPC-110と同じ縦型であり、ハイビジョンである!縦型だと手ぶれはしやすいが、上からのアングルでも下からのアングルのどちらでも、撮影がしやすいのでとても気に入っている。ヨコ型は常に胸以上のアングルでしか撮影ができないので、ボクには不向きだ。しかも値段も価格.comでは103,559円! アマゾンでは128,000円で10%還元である。これはもう神が「購入せよ!」と命じているようなものだった。

しかし!!!である。とてもショックなことを知ってしまった。外部マイクの入力がないのである。これは、人に見せる作品を作るものとしてはとてもショックなのだ。HV10はDVテープの駆動系のカムコーダーなのでわずかな駆動音を内部マイクではひろってしまうだろうし、被写体の声をインタビューしようとしても、自分の声がデカくて、インタビューする主役の声が小さいなんてバランスになってしまう。プロは業務用のデカいカメラを買えと言われているような気がする。

そう、このせっかくのハイビジョンカムコーダーも、「運動会カムコーダー」なのである。運動会のわが子を撮影するから、望遠側がとても秀逸に作られている。当然、広角側はさっぱりだ。
考えてみてほしい。画面は標準で16:9のサイズになって、映画的な計算された絵作りが求められれる画面サイズとなっている。ある程度、離れた被写体でないと16:9の絵づくりなどできない。
自宅のせまいリビングでいざ撮影しようとすると、かなり、被写体から離れなければならない。

むしろ、これからのハイビジョンカムコーダーは広角側を、魚眼にならないようにレンズ収差を抑えて近くでも部屋が広く見えるような絵作りで撮れるカムコーダーを開発すべきではないだろうか?
当然、画質が向上した分だけ、音質にもこだわるために、外部マイクをつけるべきだろう。さらに、その音声バランスを確認するためにヘッドフォン端子もマイク端子の近くに設計しなおすべきだ。

今後、フルハイビジョン画質が当たり前になってきた時に、音がしっかり取れていないと意味がない。また、さらなる問題は、ミニDVテープでこれだけビデオ撮影されているのにもかかわらず、ミニDVテープが使えるハイビジョンレコーダーがこの世の中に存在していないことだ。

なぜ?かという質問をAV評論家の麻倉怜士さんに聞いたところ「ミニDVで撮影された運動会は再生されることがないんですよ」という回答をいただいた。つまり、記録として収録し保存することが目的であり、視聴することはあまり目的として考えられていないという。当然、メーカーも保存目的用のカメラだから無駄な機能はつけないという。

うーん、なんとも複雑な思いだ。せっかくのハイビジョンなのに…。しかもテープというシーケンシャルなメディアも問題のひとつである。ディスクなどのランダムディスクでハイビジョンとなるともっとハンドリングが簡単になるだろう。これは時間の問題だ。あと5年もすれば誰もテープのメディアなんて使っていないだろう。また、作品を見せるのにYouTubeのような投稿サイトがもっと進化すると、ハイビジョンYouTubeなんて場が登場しているはずだ。

そのためにも、ミニDVテープが再生、ダビングできる、ハードディスクレコーダーが今すぐ必要だ。当然、保存メディアが汚いM-PEG2のDVDでは意味がない。Blu-rayかHD-DVDのDVDで保存したい。ようやく、ソニーの「PSP3」が11月11日にBlu-ray方式であり、AVCHDに対応して登場する。

このAVCHDは、ハイビジョンデータをH.264方式で圧縮しリアルタイムに記録できるビデオカメラ用の規格だ。この規格に珍しく、ソニーとパナソニックが手を組んでいる。
ソニーが先にHDR-UX1は8cm DVDを搭載で9/10発売に、HDR-SR1は30GB HDDを搭載で10/10発売となる。

これも喜んだところが、かなりの高スペックを要求されるカメラだ。カメラよりも編集などをしようとすると、PCの能力でCoreDuo1.66GHz以上、Pentium4で2.6GHz以上を「推奨」ということだ。PC業界で推奨ということは、最低でもそれくらいは必要という意味だ。

ということは、もう少し、ハイスペックなPCの登場を待つか、Blu-rayが標準搭載されているハンディカムを待つかという気分になってきた。

これからの高画質時代、ひとつ高画質にすると、すべてを高画質にしないとバランスが取れないというジレンマに陥ってしまう。すでにハイビジョンを目にしてしまったら、すべてハイビジョンにしないと気がすまない…つまり、現在買い時でないものばかりを買わされてしまうというハメにおちいってしまいそうだ。

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