憲法改正案の戦争放棄削除よりも怖い「国民主権」削除の前文

日本国憲法の改正に関して議論するのはとても良いことだと思う。

しかし、70年間戦争に直接関与することがなかったのは、この日本国憲法のおかげであることはまぎれもない事実である。しかし、自衛隊の派兵から、いろんな部分で憲法が邪魔になってきているという。アメリカと同様に、他国の争い事に、国連の決議のないままに制裁を加えるこことは、いささか問題である。合議のない正義は、世界の正義とは言わない。

憲法をねじ曲げてまで参戦するくらいならば、アメリカの属国として、51番目の日本州として軍門に下ったほうがわかりやすい。むしろ、日本は米国最大人口の州として属州国になれば、米国選挙にも影響でき、アメリカをアンダーコントロールできる。極論だがそういう生き方も選択肢としてはありだと考えている。

むしろ、自民党の、日本国憲法改正草案を読めばわかる国民主権の削除

自民党の憲法の「前文」を読んでぞっとするのが、国民主権の項目が、バッサリと削除されていることだ。

現行憲法 前文

「ここに 主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」

とある。しかし、

自民党改正憲法 平成二十四年(2012年)四月二十七日(決定) 前文

「日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する」

もちろん戦争放棄のコンセプトの前文も削除だ。
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf
前文だけでも比較してみるだけで、主権が国民にあるのではなく、規律=法律が主権である。
福利は国民が享受するものではなく、経済活動を通じて国を成長させるとある。

締めは…
国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する」
???そう、この国の主権は国民でなく、いつの間にか国家へとすり替わっている

戦争法案うんぬんではなく、「国民主権の削除」こそをもっと声高に議論するべきだ。そこがないと暴走を誰も止めることができなくなるからだ。

日本の国家の主体は、「自由」でもなく、「郷土」でもなく、「規律」でもなく、「誇り」でもなく、「人権」でもなく、絶対に「国民であるべき」なのである

細部にわたって、「人権」が希薄化するワードが見られる改正憲法


国立公文書館で筆者が撮影した日本国憲法 冒頭部分

 

例えば11条では…「国民はすべての基本的の人権の享有を妨げられない」が、「国民は全ての基本的人権を享有する」に変わっている。

これは、言い換えると、たとえ、(人権が)妨げられていたとしても、基本的な人権が残っていれば、享有していることになる。

明らかに、「妨げられない」のカバーしている範疇が狭まっている
読みやすくなる文章の裏に、希薄化しているワードが気になって仕方がない。

一番の問題は、憲法も法律も、いずれも数値化されている部分がないので、曖昧な日本の国語がさらに曖昧に解釈されやすくなって利用されること。だからいつまでも、人によって解釈の深さや広さが自由に変わる

法律の後ろ盾には憲法があるので、多少の自由度のある解釈は、過去の判例や社会の通年上の概念によって判断されるが、憲法は、後ろ盾のない根源なので、改正した文言の一字、一句にわたるまで、丁寧な説明が必要だ。

時代に応じた、理解のしやすさは重要だが、解釈が変わる部分は慎重にならざるをえない一番の改正は、縦書きではなく、ネットでも議論しやすいように、横書きで書くべきだと思う。

日本国憲法と日本国憲法改正草案の対比

http://editorium.jp/kenpo/const.html

【参考】北畠徹也氏のコラム
憲法全文改正への固執は現行憲法第99条違反では!?
http://agora-web.jp/archives/1642734.html

「GHQ(連合国軍総司令部)の素人がたった8日間で作り上げた代物」と評した自身の見解を撤回しなかった。
http://www.sankei.com/politics/news/150306/plt1503060043-n1.html

安倍総理 日本国憲法は、外国人の手でわずか8日間で草案が固められた
「みっともない憲法、はっきり言って」安倍・自民総裁
http://www.asahi.com/senkyo/sousenkyo46/news/TKY201212140595.html

ほのぼの一家の憲法改正
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/pamphlet/kenoukaisei_manga_pamphlet.pdf


超訳 日本国憲法 (新潮新書)