【映画】「スター・トレック(2009)」JJエイブラムスが放つヤング・カークにヤング・スポック

「スター・トレック(2009)」が先週(2009年05月29日)より公開となった。

もう、リメイク作品しか作れなくなったハリウッド映画には、あまり期待はしていない。
特にひどいのがSF映画だ。しかも、今回は、それが「スタートレック」だという。

絶対に期待を裏切られるだろう…。でも見ない理由はない。あの「宇宙大作戦」だ。

さらに、監督が、J・J・エイブラムスときている。
「LOST」や「クローバーフィールド」の製作者だ。

「クローバーフィールド」は、ボクにとっては高い評価。
http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20080414140400.html

製作・脚本の多いJ・J・エイブラムスの監督参加は、「MI: III」以来である。
微妙な気持ちで初日に向かった。

微妙な気持ちは、一気に吹き飛んだ!
純粋に楽しめた。

また、この映画は、「スタートレック」、いや「宇宙大作戦」をまったく知らない人でも楽しめる映画となっている。
クリンゴンやロミュラン、バルカンといった専門用語は出てくるが、その程度はまったく問題にならない。

・ここから先はネタバレに注意!です!

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つまり、この映画はすべての「スター・トレック」シリーズのEpisode I にあたるからだ。

どうしても、意識しているのが「STAR WARS」シリーズであることは明らかだ。

EPISODE V そっくりの雪のシーンも登場。思わずリスペクト映画?と感じた。
映画を見ていても、ライトセーバーがいつ登場してもおかしくないような錯覚まで抱く。

それくらい、宇宙大作戦のテイストに、新たなスターウォーズ的解釈がなされているのだ。

なんといっても、今回の映画では、若き日のカーク船長(本当は艦長、提督)が生き生きとリアルにしかも、やんちゃ坊主で女好きとして描かれているところだろう。

マニアックなファン向けにも、ジェームズ.T.カークのミドルのTの意味が、「タイベリアス」であり、母方の父の名前であることが明かにされた。

当初、マット・デイモンが、キャスティングされていたが、クリス・パインがカーク役に抜擢された。このクリス・パインの抜擢が、この映画を救ったと思うし、ジェイソン・ボーン船長でなくてよかった気がする。

ところどころのシークエンスがいろんな映画のパクリであるが、そこはリズム感がある演出のみせどころ。バイクで追いかけるシーンは、もしかして「T2」?「STARWARS III」?

このクリス・パインの若々しい演技が、今までの宇宙大作戦のカーク船長のロマンス好きを見事に証明してくれた。ただ、どこでどうして、カークがジェントルになっていくのかも気になるところだが…。

若き日のカークは、喧嘩っぱやくて、ナンパ野郎で、かといって強いかと思えば、ボコボコにしばかれるというキャラクター。映画の大半は、顔に生キズがずっと絶えない(笑)。

そのライバルに、バルカン星人と地球人とのダブルであるミスター・スポックが登場する。

J・J・エイブラムスの特徴は、短いシークエンスの中でも、人間関係を実にうまく表現する。若き日のスポックとカークは実はライバル関係にあったこともここでわかる。また、スポックとウフーラとの恋などもしっかりと挿入されている。

スポックの論理的思考が、母親の死によって破綻する。それを利用するカーク。その利用をアドバイスするのが、Premiereスポック。
ちょっと無理な設定もなんとなく「転送」という技術があれば、なんとなく時間の「転送」も無理なく感じるようになる。ただ、時間を自由に行き来すると物語がややこしい。

だからどんなSFでも時間移動のマシンは、中途半端な機械で展開される。自由に移動できれば、過去も未来も何万通りに発生してしまうからだろう。

エンディングで初めて、あの有名な優雅なオープニングロールが始まる。

この手法は、007/カシノロワイヤルのオープニングと一緒だ。ここからすべてが始まるという印象でもある。

本編へとつながる前に、EPISODE IIの製作にも期待したくなる。

しかし、これがハリウッドを甘やかす原因だ。結果として、MIシリーズであったり、T3であったり、本篇から逸脱してしまってしまう。T4には、多いに期待してしまう側にも原因があるが…。

この映画で特に、ユニークなのが、アメリカの役職に対しての考え方だろう。

誰がボスなのかということで立場と組織が一気に変るところでもある。これがアメリカ企業のすべてであるといってもいいだろう。このあたりの組織としてのボスのポジションの考え方は、なかなか日本ではギクシャクしてしまう。

不法侵入者も、上官になった瞬間から、上官らしくなるのが、アメリカの社会だ。

多民族国家では、あいまいな判断が一番厄介であり、明確に白黒つけなければ何事も前に進まないからだ。

人物のキャラクターによるスキル評価が高い日本に比べて、米国では職能やポジションにおける評価を最優先していることもこの映画の、人事交替劇でよくわかる。

他にもドクターマッコイが登場し、カークに対してなぜタメ口だったのかもこの映画で納得ができた。アカデミーでのご学友だったからだ。ウフーラもそうである。各種のスペシャリストが一つの船に乗り込みチームとして活躍する。

その後の「宇宙大作戦」の展開を知っているファンにとっては、まるで「7人の侍」や「真田十勇士」が同志と出会っていくかのような気分が味わえる。

他にも、17歳のリトアニア出身のチェコフが重要なポジションを受け持つ。
いかに、言葉や発音が微妙な外国人であっても、英語でパブリックにスピーチをさせたり、職能を発揮させる権限を与えられている。どんなポジションでも、責任がまかされ、それらのモチベーションを維持しながら、最善の策、ある時は奇策であっても、船の安全と任務を遂行するチームワークがこの映画で学べる。
たとえ、外国人であってもだ。

この映画は、第二次世界大戦時にはパイロット、そしてベトナム反戦家でもあった創作者ジーン・ロッデンベリーに捧ぐとクレジットがされるとおり、この多民族での連帯と敵対宇宙人ロミュランとの間にも、ルールを持って対峙する姿勢が描かれている。ロミュランの最後に大和魂を見た気さえした。

そして、ラストはスターウォーズでもお決まりの表彰シーン。

どうしても、米国映画では、最後にはこのように人々からアドマイヤーされることが人生最大の目標になるようだ。
だからこそ、銅像を建てたいがための寄付の文化が蓄積されているのだろうと思う。

いや、純粋に人を称賛できる文化はいい文化であろう。日本ではヤジる文化はあるけれども、拍手する文化がない。いつも映画を初日に見に行く理由は、拍手できる機会が多いからでもある。

テレビシリーズを長く手掛けけていたエイブラムス監督だけあって、片時も気ががぬけない。あっという間の126分間であった。

残念ながら、映画を観終わって拍手するタイミングがわかりにくい映画であったのが唯一悔やまれる。その点、スターウオーズのエンディングはここで拍手!がわかりやすい。

この映画を見てから、宇宙大作戦のシリーズを最初から見ていただけると非常に楽しめると思う。

今後、ハリウッドは、さらに「エピソード1」ブームで、既存作品のリ・イマジネーション映画を展開していくことだろう。

すでに情報過多で新たなキャラクターが生まれにくくなっている状況はわかるが、懐かしさに新しさとCGのフレイバーばかりもちょっと考えものだろう。

スター・トレックのような作品のクオリティが続いてくれればいいのだが…。

『宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である。そこには人類の想
像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているに違いない。これは人類最初の試みとして、5年間の調査旅行に飛び立った宇宙船U.S.S.エンタープライズ号の驚異に満ちた物語である。』

映画『スター・トレック』本年度初の全米2億ドル突破!!&続編も正式決定

http://www.cinematopics.com/cinema/news/output.php?news_seq=8527

映画「スター・トレック」、「いいからスポックだけでも見ておけ」
http://plusd.itmedia.co.jp/d-style/articles/0905/26/news087.html

「スター・トレック」最新作のテクノロジ–制作者たちの「リアルさ」へのこだわりhttp://japan.cnet.com/special/story/0,2000056049,20393363,00.htm




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