GoogleによるYouTube買収をボクは非常に喜んでいる!
16億5000万ドル(1980億円)相当というGoogleにとっても初の巨大買収が動画投稿サイトのYouTubeに対して、株式交換によって行われることが決定した。
創業20ヶ月(2005年2月)というYouTubeにとっては、1ヶ月あたり99億円、なんと1日あたり3億3000万円という金額になる。しかし、金額もさることながら、Googleだからこそ買収されたという考え方もできるからだ。
YouTube自身が、自らの上場へ向けてよりも、バイアウトだけが目的であれば、マイクロソフトの方がより高値で購入してくれただろう。しかし、マイクロソフトカンパニーになった時点でYouTubeのビジネスの可能性は急速にしぼんでしまうだろう。
粘着性のある広告をセンスぬきに張り巡らされて使い勝手の悪いものにされてしまうからだ(マイクロソフトは、インスタントメッセンジャーにまでゴテゴテと広告を掲載してしまっていることで有名)。
また、ソーシャルブックマークのdel.icio.usや写真共有のFlickrなどのWeb2.0企業を積極的に買収している米Yahoo!社への買収の可能性があったが、チャド・ハーリー(29歳)とスティーブ・チェン(27歳)という2人の米eBayカンパニーとなったPayPal出身者のYouTubeの共同創業者は選ばなかった。
YouTubeのベンチャーキャピタルのセコイアキャピタルは、Yahoo!やGoogleの初期段階で投資してきた会社であるのでYahoo!にも、Googleにも顔が利いていたはずだ。しかし、PayPal出身の彼らにとっては、Yahoo!の広告メディアとしてのビジネスだけでは物足りないと感じたはずだろう。そう、映像を購入できるというGoogleの「プロセス」に魅力を感じたと考えられる。
もちろん、YouTubeにも上場という道がなかったわけでもない。それにしてもまずは、広告モデルで黒字化できるという可能性を見せる必要性があった。残った手は2つだ。
ひとつは、Myspace.comのように、広告スペースをGoogleに売るイグジットだ。実際にMyspace.comの広告枠は4年の独占契約で9億ドルもの値段がつけられた(ニューズコーポレーションがMyspace.comを購入した金額は4億ドルであったにもかかわらず)。YouTubeの広告枠だけを販売する手法はあったはずだ。
そして、残るはYouTube本体ごとのGoogleへの売却だ。これは資金調達以外にもオプションがある。そのオプションとは、Googleのステイクホルダーとなることだ。今回の買収も、現金ではなく株式交換による買収である。YouTubeの2人の若者はパーセンテージは、まだ公開されていないものの、Google株の大量保持者の2人になることだろう。
アップルのジョブズ会長がピクサーをディズニーに売却したことにより、個人では最高のディズニー本体のステイクホルダーになり、買収されたことにより、ディズニー本体に影響を持てるようになったことを思い出してほしい。その後、ディズニーは積極的にアップルにコンテントを提供している。
つまり、「買収」というネガティブなイメージではなく、Googleのオペレーションも含めてという真のオプションも含まれているとみることができるだろう。
なぜ、GoogleがYouTubeに魅力を感じるのか?それは彼らの見事な「すりぬけの技」に魅了されているからだ。
YahooVideo(米国サービス)、Googleビデオ、さらに全世界で1億人ユーザーを誇るMyspaceでさえも、こと動画サービスにおいては、YouTubeに追いつけなかったほどである。この世界で一番の激戦区の荒海を、最新の大型船をもろともせずに、YouTubeという小さなボートは、見事なドライビング技術で切り抜けてきたからだ。
【初期の無料ビジネスモデル】
幾多もあった有料ビデオ投稿サイトをさしおいて、無料でしかも大容量のビデオを投稿できた。
初期の段階で、投稿は実質500MB程度、時間は無制限という信じられないほどの太っ腹であった。他の企業が100MBまでの容量をホスティングしていなかったにもかかわらずだ。さらに広告モデルでありながら、広告がそれほど掲載されないという、事実上不思議なサイトでデビューした。
セコイアキャピタルにどのような事業計画が提出されたのかがとても気になる。
【Embedによるブログスフィア活用】
アップロードされた動画ファイルがEmbedされたhtmlとして自動的にジェネレートされることにより、どんなウェブにも貼り付けることができた。
これが初期のブログコンテントとして大ブレイクしはじめた。だれもが、面白い映像を見て、それを自分のブログのコンテントして公開できるのだ。もちろんブロガーがそれぞれの母国語で紹介することにより、国外にもYouTubeが伝播していくこととなる。
【ひかえめな自社宣伝】
重要なのは、さりげなくYouTubeのビデオ映像のパーマリンクが右下のロゴに貼られていたことだ。従来のネット企業であれば、自社サイトの必ず「トップページ」へとリンクしたいところであるが、YouTubeはパーマリンクである動画サイトへと導いている。ユーザーは、そのほうがうれしいからだ。この戦術は、カナダの写真投稿サイトFlickrが、最初に始めたプロモーションである。
【おおらかな著作権保護対応】
初期のYouTubeには、xxっxにも負けずとも劣らない◯◯動画が大量に投稿されていた。しかも素人からのビデオ投稿が中心であり、商業に汚染されたネット界に無料の新風を吹き込んだ。しかも削除対応がゆるやかであり、これらも爆発的な人気の底辺を支えた。YouTubeに人数が少なく、削除人員にさける人間がすくなかっただけかもしれないが、この削除するタイミングとバランスが絶妙であった。
その後、テレビ番組や映画などのシーンも掲載されるようになったが、読者からの通報ボタンをつけることによって、対応は迅速となった。秀逸なテレビ作品などは、誰も通報せずに紹介することにより、テレビ局の番組が人気になるという「YouTube現象」があらわれはじめてからは、当初、削除でクレームをよせていたCBSなどは提携し、番組宣伝をYouTubeで行い、現在では、テレビでYouTube動画を紹介するコーナーが人気コーナーとなっている。
Googleビデオも、映画やテレビコンテンツの販売チャネルとして、アップルのiTunesStoreやアマゾンとの競合にあたるが、YouTubeというプラットフォームを手中にすることにより、新たな展開がYouTubeブランドで構築しやすくなるメリットがあるだろう。
Googleには、YouTubeという小船で最大の効果のある特殊な泳法が伝わり、YouTubeには、Googleという宇宙規模のサーチでつながった世界へのアクセスが許可されたのだ。
YouTubeの歴史 Wikipediaより
2005年2月 – 会社設立。
2005年11月7日 – ベンチャーキャピタルのSequoia Capitalから350万ドルの投資を受ける。
2005年12月15日 サービス開始
2006年2月16日 – NBCが著作権の侵害として、テレビ番組「サタデー・ナイト・ライブ」の「Lazy Sunday」の映像を削除。大手のテレビ局からの要請による動画削除はこの件が初めてであった。
2006年3月27日 – 10分を超える動画ファイルのアップロードを制限。
2006年4月5日 – Sequoia Capitalから800万ドルの投資を受ける(二度目)。
2006年4月10日 – Director制度開始。
2006年6月15日 – 大規模な違法コンテンツ(アニメなど)の削除活動が始まる。
2006年6月24日 – 音楽家専用のアカウントを作れるMusicians制度が始まる。
2006年6月27日 – かつて否定的な立場をとっていたNBCユニバーサルが一転し、提携を発表。自局番組の宣伝動画などの配信を始める。
2006年7月14日 – ニュース記者のロバート・ターが著作権侵害でYouTubeに対し米連邦地裁で訴訟を起こす。
2006年8月4日 – メンテナンスを行い、デザインをリニューアル、新機能が追加された。
2006年8月24日 – 東京MXテレビ、番組の一部をYouTubeで公開を開始。
2006年9月中旬 – プレイヤーのデザインを再びリニューアル。
2006年10月9日 – Googleが16億5000万ドルでYouTubeを株式交換で買収した。但し、ブランド名やサービスなどは既存のままであり、Googleのグループ会社になる。