人生は、たった3万日(82年×365日)

■KNNエンパワーメントコラム from 日刊デジクリ
「人生は、たったの3万日」

先週は、神戸で入院している母親、神田喜久子の病院の先生からお話しをしたいといわれたので、神戸に駆けつけた。

担当の先生曰く、腫瘍が再発し、入院してもらったが、手術を施すよりも薬や漢方で治療したいという。手術をすることも可能だが、薬で現在の痛みを軽減できることと、現在の状況よりも良くなることはないので投薬や漢方で対処し
たいという。つまり末期ガンの状況のようだ。余命は3ヶ月程度という。ちなみに4年前にウチの母親は余命1年と宣告されているので、9ヶ月はきっと大丈夫だろう。

医者の余命宣告ほど、家族に与える影響は大きいものはない。余命一年であれば、こちらはそれなりの覚悟を決めなければならない。母親なきあとの父親のこと、実家のこと、近未来の介護問題のこと…。しかし、その予想がはずれるとこちらのリズムもかなり変わることになる。

4年前は、肉親の死際には立ち会いたいと思い、米国から帰国した。今回は、入院している母親の病室には、セグウェイで書類送検されたという不肖の息子が立っていることとなった。TV報道はPRの機会でもあったので、社会的には、まったく平気だったが、意味がわからない母親だけにはTVのニュースを見せたくなかった…。親孝行ができないのは、まだいいが、この年の母親に親不孝だけはしたくなかった。しかし、結果として書類送検された息子の母親になってしまった。

「あんた、大丈夫か?」と末期の母親に自分の身の心配をされるほど辛いものはない。点滴と薬の投薬によって、かなりふっくらとした母親の表情は、こちらの心配とは、よそにとても元気に見えたのが、よけいに痛々しい。

彼女が30歳でボクをこの世にデビューさせて以来、1万5000日が経過した。人生を82年として計算すると、人間はたった3万日程度しか生きることができない。彼女は今まで2万6千日を生きてきたこととなる。あと4000日を生きるか、明日に成就してしまうかの間にある。「生」と「死」とは、ただそれだけのことだ。

年ではなく、日数で換算すると、人生の本当の長さが見えるような気がする。ちなみに、7300日で20歳、1万日で27歳、2万日で54歳。65歳の定年までは2万3000日。

つまり、バリバリと仕事面でも健康面でも両立している期間はたった1万5000日くらい。恋愛して子孫を残せる期間は、さらに短くその半分の7500日程度と考えることができる。また、人生の最後の5000日は人に世話をかける一方の日数だ。

現在、27歳の貴女の場合は、あと2万日ほど生きることができ、あと1万3000日くらい働くことができる。しかし、恋愛し子孫を母子とも安全に残せる期間は、たった3000日くらい(初産年齢を35として)しかない。さらに、週のうち5日働くと、残りの2日に理想のパートナーとの出会いのチャンスがあるとするならば、出会いのチャンスは、857日しか残されていない。わずか2年だ。その一日をどのように過ごすかは非常に重要だろう。

また、その理想のパートナーとの結婚がすべてのゴールになるのではなく単なるスタートなので、出産や離婚や死別などのさまざまな人生の山あり谷ありのイベントが待ち構えているので、幸せと感じる日々はそんなに多いものではないのかもしれない。

「あなたは、今日、幸せでしたか?」と聞かれてYESと答えることができる日が何日あるかをこっそりカウントしてみることもいいだろう。一日の終わりに鏡に向かって自分に質問してみるだけでも生き方が変わってくるだろう。

もしも、人生の残りの日々をカウントダウンで表示できる時計があれば、人々の生き方はもっと変わるのかもしれない。愛知万博まであと何日とか、オリンピックまでというあの発想だ。

暴飲・暴食・スピード違反・飲酒・自虐的な仕事、遊び、睡眠不足、ストレスなどによって、たった3万日の一生は、さらに短く設定されてしまうことであろう。

3万日以上生きる人もたくさんいる。しかし、大事なのは時間ではなく、どれだけ充実した一生を作ることができるかではないだろうか?

今、横たわる彼女の横で、介々しく世話をしている老いた父親の背中を見つめている。家族から解放され、やっと夫婦となった2人の人生がそこにはあった。単なる老夫婦の姿であるが、ボクの目には、今まで見せたことのないラブラブな二人に見えた。そして、この二人に幸せあれと祈ることしか…そんなことしかボクにはできなかった…。

彼らと同時にすごしてきた7,500日間の思い出とDNAは、いつまでもボクの身体の奥底でこれからの1万5000日を過ごすエネルギー源としてい行き続けていくことだろう。

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