【書籍】『その「日本人論」に意義あり!-大変革時代の日本人像を求めて』 #スティーブモリヤマ 著


UAE ドバイ・ドバイマリーナより  筆者撮影(2019年1月)

その日本人論に意義あり

【書籍】『その「日本人論」に意義あり!-大変革時代の日本人像を求めて』 #スティーブモリヤマ

日本人とは何か? 我々が普段考えるコモンセンスという習慣や常識。それらを、一旦、外から眺めることによって、その飯櫃さや、意外性、国際性との違いに落胆することが度々ある。

長年、日本人は敗戦国でもあり、『謙虚』さを『美徳』とするところがある。
その姿を見て、にわか、外国かぶれは…。だから日本は…。欧米では…。海外では…。
と「○○では」が乱立する。

スティーブモリヤマ氏が揶揄するところの『出羽守(ではのかみ)』だ。
いまや、『海外出羽守』と言う言葉も多く見かけるようになった。

https://www.huffingtonpost.jp/tatsuhei-morozumi/foreign-countries-contrast_a_23396552/

やたら『海外』という大雑把なくくりで、日本の習慣のおかしさを批判する人を、『出羽守』と例えた。

『出羽守』とは、秋田山形の出羽国の辺境の地での困難な任務に携わっていた人々。絶えず変化する東北情勢の朝廷への報告もその任務の一環であった。しかし平安時代も半ばになると、都の貴族たちは地方経営への関心を失い、彼らの報告をうっとおしく感じるようになっていったとされている。

https://ja.uncyclopedia.info/wiki/%E5%87%BA%E7%BE%BD%E5%AE%88

この著書を読んでみて一番感じるのが、日本のおかれている背景や環境を無視して、欧米と単純比較する『おかしさ』である。

前提条件がまったく違う『日本』と『諸外国』を単なる『事象』だけで比較する滑稽さを超え、見事に高度なウイットに飛んだレトリックで提示してくれている。さらに、スティーブの職業がらか、豊富なデータと、博識な日本の知識の『ちゃんぽん』で出羽守論を深く追求してくれる。

むしろ、日本にいながらにしても、彼を『アバター』として、海外から観察した気になれるのがこの書の一番の利点だろう。この書の一番のエッセンスは、彼のフィルタリングを通じて、日本と諸外国の『差異』を身近に感じることができる。

また、同じユーロといえども、かつては争いあっている国々が、同じ経済圏として成立している。歴史的な背景の違いも多いに参考になる。

ボクは今、ポルトガルの地で、日本人と話したこともない人たちと、共同生活をしながら、『日本人らしさ』を気高く日本人代表としてふるまっている。日本人はきれい好き。日本人はていねい。日本人はやさしい。日本人は気前が良い。

そう、世界に出る前に彼の本を一読してからでも遅くない。
彼の言わんとしていることが、あとからしみじみと理解できるからだ。
観光ガイドに乗っている場所や名所で記念撮影するだけでなく、その国の歴史的な背景や宗教的な背景、侵略の歴史的背景など、日本では得られないいろんなエピソードを知っているだけで、『旅』は大きな歴史的な『トレース』と『オマージュ』へと変わる。

しかし、この本を手にするという事は、日本だけにずっといることの問題も強く意識させてくれる。それと同時に、やはり日本の素晴らしさを知る機会の一助となることだろう。

はじめに

第1章 神話が真実としてまかり通る国ニッポン
01 入社式の謎
02 3Kを避ける本当の意味
03 人間の本質は遊びである
04 黒白のさかい目
05 新しい共同体で輝くためのヒント
06 「お疲れ様」は疲れてるの?
07 忖度と国語教育の根深い関係

第2章 グローバル化のうねりと日本人
08 冷静と情熱のあいだのノマド
09 内と外の シーソーゲーム
10 おのれを空しく
11 和風ごった煮の レシピ
12 異端者の色は何色
13 「帰国子女」は傷ついている
14 ヒップホップ音楽と日本語の相関関係
第3章 和僑の文化的謎解き
15 言語の奥底に眠るもの
16 「笑顔」の陰翳礼讃
17 反省の色は何色?
18 カッコウと閑古鳥
19 家にまつわる異文化の壁
20 愛犬は天国に行けない?
21 紳士の国のキツネ狩り
22 沈黙の力こぶ
第4章 異文化の壁・男と女の壁
23 マンマ・ミーア
24 痴漢車トーマスの苦悩
25 禁断の果実の味
26 食事を共にする意味
27 告白の重さと軽さ
28 離婚率No.1の国
29『東京ラブストーリー』とは何だったのか?
第5章 21世紀の日本人像をさがす旅
30 アリのままで
31 片目の王様の微笑
32 『下町ロケット』に見る日本らしさ
33 世界の中心で「音姫」を鳴らす
34 紙に回帰するのか、デジタル・ネイティブよ
35 二刀流の国ニッポンの強さとは
36 本当に制服のせいなの?
第6章 グローバル時代を生きるヒント
37 『ショーシャンクの空に』の向こう側
38 競争より協調なのか
39 禁止社会の憂鬱
40 生きるべきか、死ぬべきか
41 美しくも、愚かしきもの?
42 マインドフルネスよ、外来語になる前のスッピンを見せて!
「おわりに」に代えて――盲亀の浮木、優曇華の花

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