NHKの「総合診療医ドクターG」は非常に良い番組だ。
毎週火曜 午後2時05分~2時55分
http://www4.nhk.or.jp/doctorg/
熱いコトバをもったドクターが、研修医の回答者に医学の大事さ、医者の人となりを語る。
この番組を学生の頃に見たら、きっと将来は、医学の道に進みたくなるだろう。
http://www4.nhk.or.jp/doctorg/40/
「Great Imitator (模倣の名人)」
青木 眞医師
結核ということで、Great Imitator(模倣の名人)と言われるように非常に色々な病気の真似をしてきますね。SLEの真似をしたり、ベーチェットの真似をしたり。診断を間違うと大変なことになりますよね。結核以外の病気というのは、ベーチェット病などにしても免疫抑制を強くかけなきゃいけないですね。ですので、もし結核であるのに免疫抑制をやったら、大変なことになった。そういう意味では本当に注意しなきゃいけない病気だということも学んだと思います。
(2014年9月26日放送)
「ファーストインプレッションが、もう全て」
金城光代医師
ご本人の主訴はお腹が張るっていうことが主訴だったんですけども、部屋に入ってきたその最初のファーストインプレッションが、もう全て「あれっ」ていうところで、主訴とまったく異なったその息切れ感が明らかだったので、そこが一番決め手になりました。最初の数秒っていうのがやっぱり勝負なのかなというふうに。ご本人が本当にこんなに自覚してないことがあるんだっていうのが驚きでした。
(2014年8月22日放送)
「患者さんの“ことば”、大切に」
生坂政臣医師
今まで原因がわからなかった病気が、次々に診断できるようになっています。でも、検査は万能ではないし、何千っていう検査をですね、全部やるわけにもいきません。実際、原因が不明で、診断がつかない患者さんもいっぱいおられるわけですね。ただ、人は体の異変をですね、言葉で表現できるようになっています。この患者さんも言ってましたよね、「月曜日になると元気になる」。こんな病気、副腎不全以外ちょっと思いつかないでしょ? 我々が進化の過程で得た“ことば”。これを利用して、医学的に考察して、診断に導く…。これが、我々臨床医の仕事。ですから皆さん、患者さんの“ことば”、大切にしてください。
(2014年7月18日放送)
「“うちじゃない科”の医者にならない」
林 寛之医師
将来、「うちの科じゃない」っていう医者にはなってほしくない。“うちじゃない科”っていうんですけど、“うちじゃない科”。「ボクの専門はこれだから、それじゃないよ」、「じゃ、なんですか?」、「うちじゃない、うちじゃない、うちじゃない」。結局、患者さんがたらい回しにされることになるので、“うちじゃない科”の医者にならないでください。そのために、いまの研修があるので。自分が進む科じゃない科を、一生懸命やってると思うんですよ。 そうすると将来、必ずみんなの専門医としての診療を助けてくれると思います。先生方に助けられる患者さんてすごく増えると思います。
(2014年7月4日放送)
「声なきシグナルを見つけ出す」
塩尻俊明医師
実際、日常生活の中で患者さんたちが感じている症状っていうのは、例えば、自分がなんか楽な姿勢っていうのがあるなって気づいていても、それをこう、言葉に表現できないことって多いじゃないですか。そういうのは、声なきシグナルなんですね、患者さんたちの。で、そういうのを我々は問診を通して、拾い上げてあげて、それが、前屈みになると痛むのは、なんか圧迫されて、何かが腫れてるんじゃないかっていう医学的な意味づけを、その隠れたシグナルにしてあげる。問診の力だと思うんです、そういう声なきシグナルを見つけ出すのは。
(2014年5月9日放送)
「常にそこには患者さんがいる」
鈴木富雄医師
ボクらが病気を診断するっていう時は、症状が複雑だったりすると、苦しくて、悔しくて、中々診断できないこともあるんだけど、医者っていうのは、常にそこに患者さんがいるもんだから、だから、頑張れるんだよな。だから君らもこれから、いろんなね、難しい問題があったり、苦労することもあるかも知れませんけど、常にそこには患者さんがいるということを忘れずに、ぜひ頑張ってください。
(2014年4月4日放送)
「違和感を感じたなら患者の手を離してはいけない」
片岡仁美医師
私が研修医の時に、指導医の先生から、「もし、何か違和感を感じたならば、絶対に患者さんの手を離してはいけない」っていうことを言われました。で、今回は、最初に感じた違和感っていうのを追求していくことで、病状が変化していく、診察室の中でも変化していく様っていうのをとらえることができたんじゃないかなというふうに思います。まず患者さんのストーリーを聴く。これは本当に重要なことで、生活背景ですとか、患者さん自身が忘れている過去の病気の歴史も含めた患者さんのストーリーっていうことを掴んでいくっていうのがすごく大切なんじゃないかなというふうに思います。
(2014年9月19日放送)
「パズルのピースを組み合わせる」
齋藤昭彦医師
患者さんの症状が様々あり、なかなか、一緒にすることができない症状をですね、どうやって一つの病名にするのか。診断をつけることをですね、いわゆるパズルをはめて一つの絵を作ることと仮定してみますと、ピースを合わせて、合わされない時にはですね、やはり、もう一度、患者さんのベッドサイドに行って、パズルのピースの形と、それから模様をですね、もう一度確認して組み合わせる作業をしてもらいたいと思います。
(2014年8月29日放送)
「老化を診る医者が必要」
西村真紀医師
高齢者の老い、老化、そういったものは、病気ではない。で、老いを診る医者、老化を診る医者っていうのは…、大学ではなかなか学んでないんです。病気を学ぶんですが、老化は正常なので、病気ではないので、なかなか学ぶことはない。そういった老化を診れる医者っていうのが必要とされています。これがドクタージェネラルの仕事なんですね。
(2014年7月11日放送)
「当たり前のことを当たり前にくり返す」
神谷 亨医師
総合診療医というのは、広く基本的な病気を丁寧に診ていくというのを仕事にしています。大事なのは、専門領域を頑張る先生と総合的な視点をもった先生が協力しあうことなんですね。丁寧に問診をとる、丁寧に診察をする、このようなことを日々やっていないと、複雑な症例をひも解いていくというようなことはできない。日々、当たり前のことを当たり前にくり返すということが大切なことだと思っています。
(2014年6月6日放送)
「積極的問診をすること」
北野夕佳医師
私もこの症例を見たとき相当悩んだんですね。何回も患者さんのところへ問診しに行きました。そして、私が具体的に聞いたのは、「長時間、同じ姿勢で、トイレにも行かずにいたようなことはないですか?」。それで私は自信を持ってこう診断しようというふうな、病気についての情報を引き出すことができました。積極的問診をすることが、結局、患者さんの身を守ってくれるというのを私自身が経験した症例で、自分で思いついて聞きに行くっていうのを、あのなんていうか感触として伝えられればいいなと。
(2014年5月23日放送)
「病気の世界地図」
矢野晴美医師
日本の外で、あるいは、診療していない国でも、頻度が高い病気についてはしっかりトレーニングするということ。言い換えればそれは、「病気の世界地図」ということになるんですけれども、例えば、今、流行ってる病気ではデング熱というのがあったりしますけれども、そういった病気が、どこで起こっているのか、そして、それが時間が経つとともに流行ってる場所なども変わってきますので、そういったことも含めてトレーニングしていただけたらというふうに思います。
(2014年4月18日放送)
「知らないから見逃しているかも…」
忽那賢志医師
こういうSAPHO症候群という病気って、診断されずにですね、日本でたくさんいらっしゃるかもしれません。そういう患者さんって、やっぱり自分の病気が何なんだろうって、すごく不安だと思うんですよね。不安に思ってる患者さんは、診断されることで安心するということもすごくあると思うし、診断されてようやく治療をすることができると。こういう稀な病気が存在するっていうことを、知識をですね、少しずつ積み重ねていくと。そうすることで患者さんの診断が、一つね、増えていくかもしれない。ひょっとしたらね、知らないから見逃してるということがね、あるかもしれませんから。
(2014年4月11日放送)
「しっかり患者さんを診て、しっかり正確に記録を残して」
津田篤太郎医師
私たちは、現代の西洋医学っていうのを教科書で勉強してるんですけれども、ヨーロッパとかアメリカで非常に少ない病気の場合は、教科書に載ってない場合もあるわけですね。教科書に書いてあるのが世界の病気のすべてではなくて、ヨーロッパには少ない、アメリカには少なくて、我々のまわりだけで病気が発生する可能性もあるわけなんですよ。そういう時どうするかというと、やっぱり患者さんをしっかり診ることですね。わからなくても、記録に残しておいて、発表して皆で知識を共有すること。それが後々いろんな人の発見とか、知恵とかが積み重なってきて、最終的には、あ、こういう病気だったんですね、っていう風に、わかる日が来るかもしれない。しっかり患者さんを診て、しっかり正確に記録を残して、患者さんに還元してあげてください。
(2013年8月30日放送より)
「患者中心の医療」
徳田安春医師
いろんな症状の患者さん診た場合に、原因のひとつに、お薬がないかとか、あるいは、食事との関連はどうなのか、常にチェックしてですね、お薬が絡んでいる可能性も常に考えないといけないと思うんですね。年配の方がですね、出される薬の数が多いと、薬剤、お薬による副作用にあたる可能性が高くなるんです。また一方で、お薬をきちんと服用されているのか、そういうのも考えながら、そして、そのお薬をなぜ飲まないといけないのか、そのお薬と別の薬との飲み合わせ、そういった説明を充分行なうことが、「患者中心の医療」だと思います。
(2013年5月17日放送より)
「“攻める問診”ができるように」
山中克郎医師
患者さんはですね、内科の教科書通りには話されないんですよ。その病気であっても、非常に非典型的な症状をいっぱいお話されますよ。だからその病気を見落とさないためにはですね、自分の聞きたいことを、もう矢継ぎ早にですね、パッケージにして質問を攻め立てるんです。これを私“攻める問診”と呼んでいます。例えば、頭痛のときに気持ち悪くなることはないですか?頭痛のときに光を見るとまぶしくないですか?頭痛のときに家事や仕事ができなくなって寝込んじゃうのではないですか?どういう風なことを聞けばいいのかっていうことを常に勉強すれば、「攻める問診」ができるようになるんじゃないか、そんな風に思ってます。
(2013年7月19日放送より)
「積み重ねていくことが、おそらく、かけがえのない財産に」
金森真紀医師
今回カンファレンスをやっている中で何度か、ちょっと意識的にね、実際にこういう患者さんを診たことがありますかっていうのを聞いていたんですけど、患者さんから学ばせてもらっている事を積み重ねている年数の違いがおそらく私と研修医の皆さんの違いだと思うんですよね。そういう意味では、病気だけじゃなくて、それ以外の事も含めて、その患者さんのお顔だったり、周りのいろんな物と一緒にずっとずっと記憶に残っていって、それを積み重ねていくことが、おそらく、かけがえのない財産になって、今後も今後も残っていくと思うんですね。なので、今からその道は目の前に広がっていると思うので。一つ一つの患者さんを丁寧に丁寧に診てもらえたらなと思います。
(2013年4月19日放送より)
「ほんとにご家族さんはよく気がついています」
谷口洋貴医師
症状について患者さん本人から聞こうと思っても、聞ける状態でないとき。今回の例でしたら、患者さんの秘書は、ものすごくその患者さんのことを知っていたはずだけれども、知らない部分が往々にしてあるわけですね。そうしたとき、やはり私たちは、ご家族さんに聞くのが大事なことです。ほんとにご家族さんはよく気がついています。みなさんはこれからいろんな方面でいろいろな医者になられると思うんですけれども、一番、病気を見つけるポイントは、やはり患者さんだけでなく、ご家族の話もよく聞くことだということです。
(2013年5月10日放送より)
「病気の外側のところまで目を向けて」
本田美和子医師
高齢者医療というのは、その人が今後、幸せな時間を過ごすことができるために、自分たちは何ができるであろうかということを、常に、やっぱり考えていかないといけないですね。で、それは医者だけではなくって、看護師さん、薬剤師さん、栄養士さん、ソーシャルワーカーさん、それからご家族や近所の方々、コミュニティの皆さんも交えた、なんていうんですか、横断的なサポートをやっていかなければ、たぶん私たちのこれからの社会は、なかなかうまくいかなくなるのではないかというふうに思います。で、今日は先生方に、病気だけではなくって、病気の外側のところまで目を向けていただけたら嬉しいなと思って参りました。
(2013年7月19日放送より)
「患者さんを家族だと思う」
今 明秀医師
重症な患者さんが目の前に運ばれてきたとき、皆さんどうするでしょう。迷うと思います。経験をいくら積んでもやっぱり迷うことがあるんです。そういうとき、いつも考えていることがあります。目の前に運ばれた患者さんを自分の家族だと思って判断すると、決断が早いです。迷いはすぐ無くなります。家族だと思うと判断は速く、処置は早く、手遅れにならずに済みます。いっしょにやりましょう、一緒に日本を救いましょう。
(2013年7月5日放送より)
「患者さんに寄り添う」
草場鉄周医師
診断したら終わりじゃない、むしろ、ここから何が出来るか、わたしは三つの観点から考えます。まず、病気そのものに対して、医者として何が出来るか。次に、患者さんの家族や背景を考えたケアも大事。そして、ご本人の意思を聞いていくこと、患者さんご自身がどう思うか、どんなことを感じるか、どんなことが不安か。こうしたことをおさえながら、患者さんに寄り添っていく…。この病気自体は治らない、治らない病気だったら、もう知らないというのか、治らないけれどもできることがないのか、患者さんに寄り添う、ってことが非常に大事になってくる。
(2013年5月24日放送より)
「患者さんっていうのは、皆、医者の教育者なわけですよ」
池田正行医師
患者さんから、かつて、先生は若くて健康で良いですね、としばしば言われるのが辛かった。つまり、自分が健康である、患者さんとは違う。共感を持って患者さんに仲間と思ってもらうにはどうしたらいいか、っていうことを悩み続けた。自分も死にゆく者だ、病を負う者だ、同情ではなくて共感を持った仲間だっていうふうに考えられれば、患者さんから教育を受けることができる。問診っていうのは、患者さんに病気の歴史を教えてもらう。診察というのも、患者さんの体に働きかけて、その反応から患者さんの体が教えてくれるものを受け取ることだ。だから、患者さんっていうのは、皆、医者の教育者なわけですよ。
(2011年7月28日放送より)
「人間力というか、そういうところを、是非磨いてほしい」
岡田唯男医師
医師としてとっても重要なのは、やっぱりいろんな人の生活を知ってないといけないっていうことがあって、普段からどんな仕事してるんですか、家族は何人いますかっていう事がすごく大事なんじゃないかなぁというふうに思います。その全部がやっぱり自分にとっては学びの場所で、毎日患者さんから、地域から、いろいろ教わってるっていう気持ちでやってるんで。特に高齢者の方、若い頃の話、一番楽しかった時のこと教えて下さいっていうのが、すごい盛り上がるし、患者さんもそれで元気になるし、逆にそれで患者さんのことがもっと好きになるしっていうのがあって。医学的な知識も大事なんですけれども、人間力というか、そういうところを、是非磨いてほしいなというふうに考えています。
(2012年9月6日放送より)
「患者さんに正しい道しるべを示せる医者に」
森下由香医師
この患者さんが、首痛いだけだろうみたいな感じで、首が痛いんだったら痛み止め出して、それで筋肉がつるのを改善する薬をやって、耐えさせればよかったかなみたいな感じで、帰しちゃったとしたら、この患者さんはたぶん家で死んでたんですね。普段から気をつけてることなんですけど、患者さんの症状を、何が原因で起こったのかっていうことを、体全体として、しっかり捉えて、それでちゃんと最後まで診て、診断して、患者さんに正しい道しるべを示せる医者になってほしいなというふうに思います。
(2012年9月20日放送より)
「だから、やっぱり診察の威力を侮ってはいけない」
酒見英太医師
今回の症例は、比較的難しい症例だったと思うんですけれど、診察なしにレントゲン撮ってたらまず見逃します。診察してたからこそあそこをじっくり見て、ちっちゃな影が見えるぞという事に気がつく症例なんですね。だから、やっぱり診察の威力を侮ってはいけないと。出来るだけ、検査を絞っちゃう。その検査の中でも、簡便・迅速・安価なもので最終診断に到達出来たら、一番効率のいい、時間的にもね、労力的にも、医療経済的にも一番効率のいい医療をやってることになるので、皆さんにはぜひともそれを目指して頂きたいと思います。
(2011年9月22日放送より)
「絶対無駄になりません」
仲田和正医師
とにかく総合診療って言ったら、勉強すべきことがめちゃめちゃたくさんあるわけじゃないですか。でも、いろんな科をまわれるっていうのは最初の数年だけなんです。一つの専門科を決める前に出来るだけ多数の科をまわって、それから自分の専門を選んで頂きたいと思います。絶対良い医者になれると思います。僕は2年半しかやらなかったけど、もう一回繰り返せるとしたら、5年、出来たら6年くらい。別に5、6年の遅れなんて全然問題じゃないですよ。絶対無駄になりません。僕は今56になってですね、本当に最初の2年半ですね、いろんな科をまわったことを本当に感謝してます。
(2010年7月5日放送より)
「過去の失敗を、次の、未来の、明日の診療にちゃんと活かせるかどうか」
岩田健太郎医師
お医者さんは間違えるんですよ。これが100%正しいってことは絶対にあり得ません。例えば私、今でも忘れないですけど、髄膜炎っていう怖い病気の患者さんがいて、自分の思いこみでそれを見逃してしまったっていうことがあって、すごく辛い思いをしたことがあります。その思い込みが、間違いをもたらすんだよってことについては、必ず覚えておいてですね、同じ間違いは絶対にしないようにしようってことは常々心がけてます。ですから、失敗をしないことが医者にとって大事なのではなくて、自分が犯した失敗を、過去の失敗を、次の未来の明日の診療にちゃんと活かせるかどうかっていうことですね。未来の患者さんの為にはそれを活かすってことは大事だと思いますね。
(2010年9月13日放送より)