AIの父、マーヴィン・ミンスキー(88歳) 2016/01/24 脳出血

シンギュラリティとは、きっと無限の思考エンジンであるAIの方向性と、身体からの解脱であるVRの方向性の先にある座標が交差する地点なのかも…。

人工知能(AI)の父」として有名な米マサチューセッツ工科大学(MIT)のマービン・ミンスキー名誉教授が24日、脳出血のため死去した。88歳だった。MITが25日発表した。

1927年、ニューヨーク生まれ。50年に米ハーバード大学を卒業後、54年に米プリンストン大学で数学の博士号を取得。58年からMITで教べんを執った。56年、米ダートマス大学で開かれた会議で、AIという研究分野を提唱。59年にMITにAI研究所(現在のCSAIL)を共同で設立した。85年にはMITメディアラボの創設にもかかわった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM26H4Y_W6A120C1000000/


https://ja.wikipedia.org/wiki/マービン・ミンスキー
Marvin Minsky

人工知能(AI)のパイオニアとして知られるマーヴィン・ミンスキー(マサチューセッツ工科大名誉教授)が2016年1月24日、脳出血のため亡くなった。88才だった。

情報源: AIをめぐる知の行方──AIの父、マーヴィン・ミンスキー追悼:武邑光裕 « WIRED.jp

1990年、オーストリアのリンツで開催された「アルス・エレクトロニカ」のテーマは“Digital Dreams-Virtual Worlds”。VR(ヴァーチュアル・リアリティ)に焦点をあてた欧州初のシンポジウムが開催された。会議のオープニングパーティで、ぼくははじめてミンスキーと対面した。ちょうどこの時期は、相次ぐ大型資金の打ち切りでAI研究は冬の時代だったが、ミンスキーにとってVRは特別な関心事だったのだと思う。

、この年の「アルス・エレクトロニカ」には、ミンスキーのほか、当時世界中を興奮させたVRの伝道者ジャロン・ラニアー、そしてドラッグ文化からコンピューター文化の偶像に変身していたティモシー・リアリー、EFFのジョン・バーロウ、サイバーパンク作家のウィリアム・ギブソンとブルース・スターリング、『劇場としてのコンピュータ』を著したブレンダ・ローレル、サバイバル・リサーチ・ラボのマーク・ポーリン、そして、テクノシャーマンとして知られたテレンス・マッケンナも参加していた。

AIの父と呼ばれるミンスキーがなぜVRのシンポジウムに招かれたのか? ミンスキーは、63年にヘッドマウント・ディスプレイの原型を開発し、のちにVRと呼ばれるテレプレゼンスの分野においてもパイオニアであった。この研究開発はのちにコンピューターグラフィックス技術の革新を主導し、ミンスキーが博士論文の指導をしたアイヴァン・サザーランドに引き継がれ、その後、NASAのエイムズ研究所のスコット・フィッシャーに受け継がれた。ジャロン・ラニアーは、ラッセルの呼びかけに応じ、ミンスキーとの出会いを強く求めていた。アメリカでは実現できなかった2人の出会いも、オーストリアで叶うことになった。

ミンスキーは常に人間と機械(AI)は対等で交換可能であると主張してきたし、将来的にはAIが人間の知性をはるかに上回るとも予見していた。2003年のTEDの講演では、人間と地球のエコシステムを維持するためには、人間それ自体をさまざまな手段で改造し、死を克服する延命や肉体の呪縛から離れ、デジタルな心の存在として生き続ける「意識のアップロード」の可能性までを示唆していた。かつてリアリーが提唱した「宇宙移民(Space Migration)+増強した知能(Increased Intelligence)+生命延長(Life Extension)=宇宙への人間知性の拡張」というファンタジーとは異なり、ミンスキーの言説にはいつも確信めいたリアリティを感じた。

AIの解体新書:「心の社会」
ミンスキーの主著『心の社会』(1986、リンク先は90年刊行の邦訳本)に登場するのは、相互作用するエージェントという概念である。自分とはひとつではなく、自分の心は無数にあるということを、ミンスキーは、心を小さな部品の集積(モジュール)であると説明しながら、1つひとつの部品を「エージェント」と名づけた。人のさまざまな行為には、階層構造をなした多くのエージェントが関わっていて、これらのエージェントは人間社会のようにインタラクション(相互作用)で成り立っている。
例えば、絵がうまく描けなければ、絵を破り捨ててしまうという別の行為(描いた絵を壊す)が起こる。絵を描くエージェントが絵を壊すエージェントと主導権を競うのだ。心とは、最初に決定づけられているものではなく、ある出来事が「つくられてから知ること」の連続であることを、ミンスキーは示した。そして、心とは、「1つひとつは心をもたない小さなエージェントが集まってできた社会」であると結論づけたのである。これは、デカルト以来、ひとつの自己や人格という大きな物語に支配されてきた我々を、簡潔な「ナラティヴ」に解体した革命だった。
ミンスキーの「心の社会」論は、AI研究を飛躍的に進化させたし、コミュニケーションというのは、他者を想像し想定する力の集合(社会)であるという観点は、AIの推論モデルやソーシャルメディアの本質的な可能性にも道を開いた。つまりAIとは、自分の心の中に「人間の心が織りなす社会」を移住させることを意味しているのだろう。だからAIは、人間の心やソーシャル(社交)を内在する機械であり、あらゆる人間(他者)を想像しながら対話する存在だということである。「心の社会」は人間の心に迫っただけでなく、AIの解体新書でもある。

http://wired.jp/2016/02/04/father-of-ai/