ここではネタバレしたくないので、最低限の情報だけ。
映画には、完全なフィクションとノンフィクションがある。
そして、この間にヒストリー、歴史映画というジャンルがある。
この「エクソダス:神と王」も歴史映画のひとつだ。
そして、その歴史の中でも、「聖書」に関する歴史だから、知っておいて損をすることはない。特に日本人の歴史観・宗教観からすると、遠い存在だが「ユダヤ人」の思想を知っておいて損はないと断言をしておきたい。
時の勢力者・権力者(この映画ではエジプト王のファラオ=ラムセス1世2世)と、いつも弱者の顔を持つユダヤ人(ヘブライ人)=イスラエルの民との物語。
この映画で損をしているとしたら、このタイトルではないだろうか?
「エクソダス:神と王」
EXODUS GODS AND KINGS
これを見ただけれでは聖書の映画とは誰もわからないだろう。
「エクソダス(Exodus)」と言えば、旧約聖書の『出エジプト記』を英語では意味する。しかし、日本では、ピンとこない。「神と王」といわれても、「ロード・オブ・ザ・リング」のシリーズみたいだ。しかも英語は複数形なんだから、「エクソダス:神々と王たち」だ。ん…?。なんだか、「生活の党と山本太郎となかまたち」みたいか…。
配給元は、PRとしても、「エクソダス:新説 十戒」「エクソダス:旧約聖書、出エジプト記」「エクソダス:モーセの十戒」「エクソダス:モーセとラムセス」とかにすべきであっただろう。もしくは、今からでも日本人にもわかる聖書の物語というコンテクストにスべきだろう。
また、今回は歴史的認識が違うということで、ご当地のエジプトでは上映が禁止とか…。
❏エジプト文化省長官であるガバー・アスフォー氏は、「ユダヤ人奴隷が大スフィンクスやピラミッドを作ったことになっているのは、歴史上間違っている。なぜならそれらの建設は紀元前2540年ほどで、ユダヤ教の父とされるアブラハムが現れる500年以上も前の出来事だからだ」「これは、シオニズムの考え方で、歴史上の誤りを含んでいるため、われわれは公開を禁止にした」
http://www.cinematoday.jp/page/N0069467
聖書にまつわる知識を書籍から得るのは難しいが、マンガや映画からでは比較的カンタンに理解することができる。また、外国映画や文化が聖書と関連しているので、この知識は無駄にならないからだ。ユダヤ教聖書を「旧約聖書」と世界的にはいうが、ユダヤ教の彼らからすると他の聖書(キリスト教の新約聖書、イスラム教のクルアーン=コーラン等)はない。しかし、キリスト教でも「旧約聖書」、イスラムでも「旧約聖書」は認められている。
そこに描かれる「神」の存在は、ユダヤ教もキリスト教もイスラム教のアッラーでさえ同一人物だ。
この映画の最大のポイントは、その「神」が堂々と登場するところなのだ。
この神の描き方に、ボクは、非常に感銘を受けた。
そして、クリスチャン・ベールを演じるモーセは、イスラム教にも登場する人物だ。イスラム教も本来はユダヤ教を始祖としているからだ。
【ざっくり知る】キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の違い
この宗教の解釈で人類は何千年にもわたり、争い続けている。平和的な解決を考える際に、聖書にも描かれたこの 「出エジプト記」の理解は重要だ。
そして、約束の地であるカナンで争いが起きないようにと石版にモーセが記すのが、あの「モーセの十戒」なのだ。
「エクソダス」では、モーセが、神の言葉を刻むシーンが登場する。そして、モーセは神と対話の中でこの十戒を刻むときにあるヒントをモーセに託す。
1神が唯一の神である
2偶像を作ってはならない(偶像崇拝の禁止。別の神を作っても拝んでも仕えてもならない)
3神の名をみだりに唱えてはならない
4安息日を覚えて、これを聖なる日とせよ(6日間働いてすべての仕事をし、7日目はどんな仕事もしてはならない)
5あなたの父と母を敬え
6殺してはならない
7姦淫してはならない(結婚前、配偶者以外との性行為)
8盗んではならない(誘拐を指しているとの見解もある)
9偽りの証言をしてはならない
10隣人の家を欲しがってはいけない(妻、奴隷、牛、ろば等全て)モーセの十戒より
この、なんとも不可思議な十戒の戒めは、なぜ?という疑問がこの映画を見て、はじめて意味がわかった。
すべて、その◯◯の為に石版に掘られたのだった。
レンブラントが描くモーセ
ちなみにこのモーセの石版をおさめられた葛籠(つづら)は、西洋ではアーク(聖櫃)と呼ばれ、スピルバーグ監督の「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」にも登場する。日本に伝来した、おみこしの「神輿(みこし)」と非常に似ている。
みこしを担ぐ時の、「エッサ、ホイサ」はヘブライ語の「エィッサ ホー イッサ=イエスに栄光あれ」「ヤーレン・ソーレン=我、ひとり唄う」、「ナンジャラホイ=天使を守ってください」、「シャンシャンシャン=安全」、「ドッコイショ=打ち砕け」などなど
また、日本の神話にはユダヤ教との接点もたくさん…。
また、新渡戸稲造の描かれた5ooo円札だが、裏に描かれた富士山の水面には、どう考えてもおかしな富士山が写っている。これはモーセが十戒を掘られたシナイ山だからだ。
この経緯は、造幣局に問い合わせると誰がデザインしたかわからないと言われて困った事がある。日本の近年の紙幣のデザインを誰がしたかわからないというのだ(笑)。
「エクソダス」は、よくある巷の3D大作映画としても、楽しめる。宇宙やビル群の3Dは、もはや現実以上に現実感を堪能できるようになったが、この映画の3Dは自然特に、天変地異を表現している。
DVDなどで後でテレビで見るのはもったいない。
まさに、この「エイリアン」の名匠リドリー・スコットの紡いだ映像は、映画館でこそ、見る価値のある映像なのだ。
「旧約聖書」の「出エジプト記」については、チャールトン・ヘストン主演の「十戒」がある。セシル・B・デミル監督生涯に二度も撮影した映画だ。この映画のモーセは特殊能力を身につけた天変地異を起こす側だが、「エクソダス」のモーセは極めて人間的に描かれている。
「十戒(The Ten Commandments)1956」
セシル・B・デミル監督
Budget: $13,282,712 (estimated)1300万ドル(※13億円)
Gross: $80,000,000 (USA)8000万ドル(※80億円)
その後、ヘストンは、今度は、イエス・キリストが登場するベン・ハーでも登場する。
「ベン・ハー」の戦車シーンは、このエクソダスにも色濃く影響を与えている。同一カットで、オマージュとするシーンもあるほどだ。
「ベン・ハー(Ben-Hur A Tale of the Christ)1959」
ウィリアム・ワイラー監督 製作費54億円
Budget: $15,900,000 (estimated) 1500万ドル(※15億円)
Gross: $70,000,000 (USA)7000万ドル(※70億円)
EXODUS GODS AND KINGS
http://www.imdb.com/title/tt1528100/
http://www.foxmovies-jp.com/exodus/
製作費 1億4000万ドル(※140億円)
Opening Weekend(公開初週末興行成績)
$24,115,934(USA) (12 December 2015) (3,503 Screens)
2400万ドル(※24億円)
リドリー・スコット監督 インタビュー
これは映画を見終わってからに…。
http://www.foxmovies-jp.com/exodus/
ぜひ、この「エクソダス」の壮大なる世界観と、時の権力者のミスジャッジをご覧くだされ!