間違いだらけのセカンドライフビジネス

セカンドライフの世界人口は700万人を超えた(2007年6月現在)。

警告しておきたいのは、セカンドライフの住人のほとんどが、リンデンドルを持っていないか、持っていたとしてもダンスパッドで踊って稼いだ数十ドルから数百ドルしかもっていないということを念頭においてビジネスを考えておくべきだろう。

実際の日本円に換算すると、一人あたり約250円(L$500)の資産があるかどうかというビジネス市場規模である。

こんな市場で、3Dで物を作り、販売していくというために、島を購入したり、土地を開発するというのはすこしビジネス的にはズレているとしかいいようがない。また、そういうことで儲けられると煽るメディアも問題だ。

現在、流行しているのが、「宝くじ」が無料でもらえるということで、島に人を集客するという企画だ。なんと一等賞で、L$1000が当たる!のだ。
日本円に換算すると、たったの500円だから夢がない。しかし、ここはセカンドライフ、全資産がL$250の人にとっては、資産が4倍になるのだからとっても魅力だ。

そう、セカンドライフの魅力は、L$というデフレの価値感で、もうひとつの「アナザーワールド」で生活できるという点である。この世界は、インターネット普及の歴史を着実に再び、歩んでいるのがとてもユニークである。

我々はここでも再度、たくさんの過ちをおこそうとしているのが特徴だ。

●ウェブはデザイナーがつくるもの。

インターネットの黎明期、「ホームページ」というウェブサイトを企業が、こぞって導入しはじめた。まずは、ホームページをどこよりも早く、持つことが求められた。ドメインも早く取得しないと、他社にとられてしまうという危惧も煽られた。

これは現在のセカンドライフの島や土地の購入にあたる。
そして、制作するのは、グラフィックデザインやDTPをおこなっていたクリエイターたちだ。HTMLをにわかに覚え、デザインを主体にかっこいいホームページを作ることが最大の目的とされた。

大きく、変わったのが、大手のプロダクションよりも中小、いやSOHO系のデザイナーのほうが、柔軟に対応できたことだ。これもよく似ている。

大手のほとんどが、下請け、孫請け、ということで、結局は同じ人が作業してウェブを制作していた。企業は「インターネットのことはわからないので、おまかせで」というのがほとんど。

会社概要をそのままスキャンし、社長のあいさつを音声で録り、未完成の部分は、「工事中」としてお辞儀をするおじさんの作業員のアニメーションGIFを貼り付けておけばよかった。

現在のセカンドライフ内の建物も立派なところもあるが、大半がこのような請負型で作られている。また、立派であることが大事なように勘違いされている。

立派な建造物は、一度行き、体験すればいいのであって、観光と同じである。そこで、何らかの貴重な経験や感動がないと、またそこへ戻りたいとは誰も思わないのだ。

●無料プレゼントが流行った時代

初期のウェブサイトは、集客し、アクセスを向上させることが目的だったので、こぞって、企業サイトは、無料プレゼントキャンペーンをおこなった。

無料でアンケートをとって、アクセス数を伸ばさせ、商品を送る。会議でこれだけアクセス数が伸びたといっては、サンプルを送り続ける。サーバーが落ちると担当者は申し訳ありませんといいながらも、喜びをかくせない。

当然、プレゼントにフォーカスしたプレゼントサイトがあらわれ、ユーザーは自動的に企業のサイトに訪問することなく、機械的にプレゼントに応募することが可能となった。

また、サンプルをプレゼントした人たちの大半は、無料でもらうことを意図していたため、リピーターとはならず、無料プレゼントキャンペーンは早々とインターネットの歴史の中から、消え去ることとなる。

ようやく、セカンドライフもこのビジネスフェーズにはいってきたようだ。
リアルな物質を用意し、発送する必要がないので、コストは安い。しかも、確実に来場者は増えているので、広告効果があると見込む。

しかし、一日に数百人である。だが、期待値はインターネットの世界と同様に高まる。なぜならば、ここにはGoogleも存在しないし、まだYahoo!さえも登場していない未開の世界だからだ。

次に登場するのはビジネスモデル特許?儲かったのは、ネットベンチャーや企業のインターネット事業部ではなく、弁理士さんと特許庁。 特許侵害を恐れるあまりに、ビジネススキームを考えて、ビジネスモデル特許を取得するという愚行に走っていた時期もあった。

すべてのIPプロトコルを3D世界のメタバース上に再現するというリンデンラボのミッションを考えると、この先のセカンドライフやセカンドライフビジネスを予測することはとても楽しみではある。そう、ボクたちはこのメタファーを一度は経験しているはずなのに、また、同じ過ちを繰り返そうとしているから…。

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