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【掲載】「記録」に掲載いただきました。

転載許可をいただけましたので、転載させていただきます。
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 テンガロンハット、見る者を引きつける笑顔、こちら側に差し出されたマイク。クリーンで誠実な人柄を演出する選挙ポスターの中でも異色ぶりが目立つ。

 だが、最も目立つのは彼の掲げる公約。今回はじめて国政選挙において立候補した神田敏晶さんが掲げるのは年金政策や格差是正や憲法論ではなく「政治2.0」である。ピンと来た人はお分かりだろう。選挙制度や情報公開制度の面で、神田さんはインターネット時代に合わせた法整備を訴えている。

「コンピューター誌の編集や取材を通して日本におけるITを眺めているうちに思うようになったのは、インターネットの技術が政治や行政においてうまく活用されていないことです。インターネットを取り入れた投票制度や選挙運動の是非などが議論されてはいますが、現状はまったく変わっていない」

 選挙制度を規定する公職選挙法が制定されたのは今から60 年近くも前の昭和25 年のこと。同法は当然、インターネット社会を想定されたものではない。“ ドッグイヤー” という表現があるように情報技術は驚異的なスピードで発達し、ケータイ、ネットを中心に社会へ多大な影響を与えた。今や企業社会は情報技術への適応なしに生き残ることはできないのが、国を牽引するはずの政治や行政だけが旧世界を引きずっているのが現状である、と神田さんは言う。

「例えば行政でいえば情報公開。行政が行うことについての透明性がこれほど求められているのに、ネットでアクセスしても考えられないくらいサイトが見づらい。ユーザビリティが全く考えられてないんですよ」

 行政のサイトであっても簡易明瞭に目的のデータを手に入れることができること。さらに、透明性ある社会を目指すのなら、土木事業であれば「行政からの発注先企業は○○でいくらで請け負うことになった、またROI(費用対効果)はこのくらい」という部分まで国民が知ることができるようにすべきだと訴える。

 国会の構造についても疑問がある。“ 良識の府” などと言われる一方で存在意義についても議論が絶えない参議院だが、神田さんの見方はこうだ。「衆議員で決めたことが、同じような政党で占められた場でもう一度是非を問われる。それはおかしいでしょう。思うに、参議院に政党は必要ないんですよ。任期も長いですよね。1、2年のサイクルで、政治参加したい人材をどんどん回すくらいのことはしないと」

 既存大手マスコミの煽動型メディアのあり方にも否定的。閣僚の失言について、言葉尻だけを取り上げておもしろおかしく書き立てるような方法論が果たして実のあるものなのか、そしてその内容に影響を受ける国民性を疑問視する。

「失言にあたる言葉だけをクローズアップするよりも、発言までの文脈の流れが重要なはずですよね。例えばyoutube のようなメディアで、いつでも個人が会見の様子などを見れるようになれば、発言の内容について自分で判断出来る。力を持った者だけが発信する内容に流さ
れるといったことが起こらなくなる。そういったメディアリテラシーも培われるはずですよ」

 神田候補のビジョンは率直に言えば説得力があって興味深い。ただ政界での認知度の低さとパッと見て特異に映る政策から、地球は回ると説いたガリレオを見る心境にも似たものがあった。だが確かに地球は回っていたし情報技術は確実に新しい時代を創る。

 目には見えないIT ユーザー層が神田さんに激しく同調している可能性は大いにあり得る。結果は投票箱を開けてみなければ分からない。

■神田敏晶……ビデオジャーナリスト。IT 系のフリーペーパー編集長、デジタル放送局KNN.com を起業。日本ではじめてテレビとyoutube での同時配信を実現させた「BlogTV」でキャスターを勤める。著書に『Web2.0 でビジネスが変わる』(ソフトバンク新書)など。
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