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500年企業、老舗『とらや』15条の掟書き 黒川光博 虎屋17代当主 代表取締役社長

十七代 黒川光博より 赤坂本店をご愛顧くださったみなさまへ

とらやが3年間の新築工事にはいった…。

そのご挨拶の文面が素晴らしすぎる…。お客様のことを常に考えていることを表している…。

どのファッション店舗でも、お客様の荷物と共に出口にまで見届けるというサービス。
これは『とらや』のお見送りが定番化したにすぎない。

和菓子という、鎖国をしていた日本が、ポルトガルや中国の交易と共に、菓子と混ざり合うことによって確立された新ジャンルだった。その精神と新たな とらや。

そこには、企業体としてのミッションやコアコンピタンスを明確にしめすとらやの15条の掟書があった。

十七代 黒川光博より 赤坂本店をご愛顧くださったみなさまへ
赤坂本店、および虎屋菓寮 赤坂本店は、10月7日をもって休業いたします。
室町時代後期に京都で創業し、御所御用を勤めてきた虎屋は、明 治2年(1869)、東京という全く新しい土地で仕事を始める決断をしました。赤坂の地に初めて店を構えたのは明治12年(1879)。明治28年 (1895)には現在東京工場がある地に移り、製造所と店舗を設けました。

昭和7年(1932)に青山通りで新築した店舗は城郭を 思わせるデザインでしたが、昭和39年(1964)、東京オリンピック開催に伴う道路拡張工事のため、斜向かいにあたる現在地へ移転いたしました。「行灯 (あんどん)」をビルのモチーフとし、それを灯すように建物全体をライトアップしていた時期もありました。周囲にはまだ高いビルが少なかった時代で、当時 大学生だった私は、赤坂の地にぽっと現れた大きな灯りに心をはずませたことを思い出します。

この店でお客様をお迎えした51年のあいだ、多くの素晴らしい出逢いに恵まれました。
三日にあげずご来店くださり、きまってお汁粉を召し上がる男性のお客様。
毎朝お母さまとご一緒に小形羊羹を1つお買い求めくださっていた、当時幼稚園生でいらしたお客様。ある時おひとりでお見えになったので、心配になった店員が外へ出てみると、お母さまがこっそり隠れて見守っていらっしゃったということもありました。
車椅子でご来店くださっていた、100歳になられる女性のお客様。入院生活に入られてからはご家族が生菓子や干菓子をお買い求めくださいました。お食事ができなくなられてからも、弊社の干菓子をくずしながらお召し上がりになったと伺っています。
このようにお客様とともに過ごさせて頂いた時間をここに書き尽くすことは到底できませんが、おひとりおひとりのお姿は、強く私たちの心に焼き付いています。

3年後にできる新しいビルは、ゆっくりお過ごしになる方、お急ぎの方、外国の方などあらゆるお客様にとって、さらにお使い頂きやすいものとなるよう考えています。
新たな店でもたくさんの方々との出逢いを楽しみにしつつ、これまでのご愛顧に心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

虎屋17代
代表取締役社長 黒川光博

https://www.toraya-group.co.jp/toraya/news/detail/?nid=76

https://www.toraya-group.co.jp/

とらや15条の掟書


九代目光利 1805年

「御所の御用品を扱っているというのは大変名誉でありがたいことである。であるから、口や手などはたびたびよく洗って清潔にしなくてはならない。このことは人が見ている、見ていないにかかわらず、励行することが肝要である」

「目下の者へ、上の者はいろいろ教えてやるようにすること。また下の者でも、上の者の落ち度などに気付いたら遠慮なく注意し、お互いに『水魚の交わり』のように隔てなく付き合うこと」

「日ごろから習字や算術などの稽古に励むこと。支配人や番頭になったとき、あるいは独立して店を構えるとき、そういうことが必要になるから、常日ごろから勉強しておくこと」

といったことが書かれてあります。火事の後、こういう掟書をつくって会社の引き締めを図り、やらなければならないことを明確にしたのだと思います。

時代とともに生きる老舗「虎屋」が進化し続ける理由
~虎屋17代当主・黒川光博氏が語る伝統と革新の企業哲学~
http://www.academyhills.com/note/opinion/11121301toraya.html

※社史 『虎屋』で検索すると表示される
http://shashinomori.dualchives.jp/contents.asp

一、 毎朝六つ時(午前六時頃)には店の掃除をすること

一、 倹約を第一に心がけ、
良い提案があれば各自文書にして提案すること。

一、 菓子の製造にあたっては常に清潔を心がけ、口や手などをたびたび洗うこと。

一、 どのような方でもお客さまを訪ねたら長話はせず、
丁寧にお答えして速やかに帰店すること。
また外出中に自分の用事で他所へ寄ってはいけない。

一、 御用のお客さまでも、町方のお客さまでも丁寧に接すること。
道でお会いした場合は丁寧に挨拶すること。

一、 お客さまが世間の世間の噂話をしても、こちらからはしない。
また、子供や女性のお使いであっても、 丁寧に応対して冗談は言わぬこと。

一、 仕事はそれぞれが得意なことを励み、上の者が徐々に下へ教えること。

一、 上の者でも手落ちがあった場合は遠慮なく注意しあって
常に「水魚の交わり」を心がけること。

一、 仲間を組んで悪いことをした者がいる場合は届け出ること。
もしその仲間であっても抜けた場合は許して褒美も出す。

一、 手代や子供(丁稚)に至るまで、常に書道や算術の勉強を怠ってはいけない。
そうしなければ、支配人や番頭に昇進することはできないし、
将来独立して他の商売についても困る。奉公中に精進すること。

一、 親しい方が見せても七ツ時(午後四時頃)までは
酒肴を出してはいけない。ただし遠来の珍客は別である。

一、 男女はむやみに話してはいけない。

一、 子供の休憩は支配人の指図により決める。

一、 奉公人には毎月二階酒肴を出す。

この掟は子供には難しいところもあるので、大人からよく説明して理解させること。

『虎屋 和菓子と共に歩んだ五百年』より(黒川光博著/新潮新書)

変えていいものは「味」、変えていけないものは「お客様に対する感謝の気持ち」

人を大切にして500年、現代に生きる「掟書」――虎屋黒川光博社長インタビュー

【オルタナ42号】人を大切にして500年、現代に生きる「掟書」――虎屋黒川光博社長インタビュー

虎屋 和菓子と歩んだ五百年

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