BI インターネット紀元前 2007年からのふりかえり

BI Before-Internet
日本のインターネット紀元前

1990年代中頃 20世紀

マルチメディアブームが去り、CD-ROMを制作していたクリエイターやDTPのオペレーターたちが、インターネットという新しい世界での構築にとりかかりはじめた頃だ。正しい情報は、書籍や雑誌ではなく、現場から生まれていた。誰も、業界に先生がいないから、自ら研鑽を高め、そこで得た情報を共有するしか方法がなかった。新しいメディアの文法は常にそうやって作られる。
日本では1994年10月、インプレスから「インターネットマガジン」が創刊され、付録のHTMLマニュアル冊子が唯一のウェブサイト構築に関する情報だった。

電子メールでやりとりできる人が限られていたり、FAXがビジネスコミュニケーションの中心だった頃。携帯のi-modeがなかった頃。SPAMがなかった時代。デジタル業界はスタンドアローンでありながらも、ネットワークの可能性と魅力に、かなりの人が取り憑かれていった。

メールアドレスは会社でひとつだけ

ほとんどの会社が、事業部にインターネットにようやく接続された一台のWindows95の端末を使って、ダイヤルアップでアクセスする。電子メールは、info@あての会社のメールアドレスを部署全員で共有していた。一人に一人づつのメールアドレスがなかったのだ。また、名前のアドレスではなく、数字だけの可哀そうなアドレスの人も多数いた。今から考えると信じられない世界だ。

HTMLはフロッピーで郵送で送っていてウェブを更新する時代 更新に約1週間かかる

ボクが最初に書いたHTMLは、3.5インチのフロッピー保存し、郵便でNECのmeshnetのサービスセンターに送り、担当者がチェックして、ようやく3日後にアップロードされた。「神田さん、ホームページ更新されました」と電話でお知らせしてくれる。まるで電話に交換手がいたころのようだ。印刷と同様に時間のかかるウェブサイト構築時代=この頃からホームページという言葉が誤用されはじめる。

新しいウェブサイトの情報は、新聞や雑誌で知り、URLをメモに控えてからアクセスしていた。なぜならば、時間あたりでプロバイダーから課金されるので、インターネットで目的が達成されるとすぐにログオフする。専用回線が夢の時代であり、常時接続のインターネットがある会社へ転職を考えたくらいだ。

ブログなどもなく、先進的な個人ユーザーが個人ホームページを立ち上げていた。これからの企業はホームページくらいもっていないという論調に、続々とホームページの立ち上げプロジェクトが動きはじめたのだ…。

ウェブデザイナーの誕生したインターネット黎明期

昨日までDTPをやっていたデザイナーがいきなりホームページの専門家としてデビュー、AdobeのIllustratorとPhotoshopそして、PageMillさえあればウェブデザイナーだった。ページ単価が10万円とか破格な見積りでもとおる時代(笑)だから3ページくらいしか作らない会社が続出。
むしろ企業ドメインを取得することに価値が生まれ、サーバを触れるデザイナーがドメイン管理ビジネスを始める。まさになんでもネットのビジネスになった頃だ。

社長のあいさつをリアルオーディオで録音しましょう。Flashという最新技術でアニメーションを駆使しましょう。景品プレゼントがアクセスアップの秘訣です。米国ではアマゾンという在庫を持たない本屋が話題です。ビジネスモデル特許を申請しなければビジネスモデルが真似されますよ。

ほとんどが、とんでもない間違いを繰り返していた。

大半のビジネスユーザーは、ホームページを誤解していた。それは自分があまりネットを使ったことがなかったからだ。だから専門家の意見を聞くしかなかったからだ。専門家といっても3ケ月前はズブのど素人だ。ホームページブームの幻想から生まれたネットバブルが終焉した時から、ネットの本当のビジネスが動きだしたように。

2007年に予測した2017年の世界

2011年にアナログ波を停止したテレビは、ネットと完全融合し、単にモニターと化している。ネット広告とテレビ広告は同額となり、視聴者にとっては、プッシュでくるのがテレビコンテンツ、プルで使うのがネットコンテンツという感覚だ。旧・総務省の方針でテレビコンテンツはすべてオンデマンド化されたからテレビも検索して楽しむ人が増えた。ハイビジョンは当たり前で、4Kのスーパーハイビジョンが普及期を迎えている。

ウェブサイトでは、仮想空間が提供され、ユーザーがそのサービスや製品を購入したら、どんな生活になるのかが実感できるようなサービスが提供されている。もちろん、PCモニタでもテレビでも利用できる。

アバターで「Wiiシャツ」を着て操作すると浮遊感まで生まれるようになった。「Wiiパンツ」は18歳以上でないと販売されないはずだが、中学生で大流行だ。これでまた日本の少子化に拍車がかかるだろう。

AmazonのKindleのような携帯端末が進化し、いつでもネットに接続できる。税金を払っていると、国からプレゼントされる。国は消費動向を個人の行動から掌握しようとしている。

デスクトップパソコンはオフィスくらいでしか見かけない。ようやく日本語での音声入力が機能するようになった。キーボードに依存しなくてもいいが、しゃべるより打ったほうが早い。
オリンピック以降、中国が大躍進し、移民が増えて日本でも英語をしゃべる人の方が多くなった…。最近の若い人は、日本語よりも直接、英語圏のコンテンツにアクセスする。NHK放送の半分は英語放送になっている。日本人の中でも言語デバイドによる格差が問題になっている。

家電もすべてネット制御だ。配線もほとんでみかけなくなり、コードレスで電源が供給されるから、充電も不要だ。電気、ガス、水道も新規参入が増えて、10年前よりも安く提供されるようになった。石油の代替エネルギーの開発促進と公共料金の構造改革努力の賜物だ。

今月は、忘年会シーズンだ。ほとんどのことが、ネットでできるようになったけれど、人間はやはり、集まりたがる。炉端をかこんで、酒を飲む。携帯電話が飲みすぎや塩分の摂取量をチェックしているが、「そんなの関係ねえ!」で飲んでいる。

この飲み会の模様は、居酒屋のウェブからメンバーに中継されており、参加できない人もそこの場に居合わせたような気になる。また、参加者はこの日の飲み会を再生したり加工ができる。

そういえば、20年前のデジタル忘年会で出会ったカップルは、結婚して、その子供も今回は参加している。ボクの孫もそこにいる。その孫と同い年のボクの子供もそこにいる。

BI インターネット紀元前 2007年からのふりかえり
2007年12 月17日 (月曜日)の記事より抜粋