「炎上係数」で測るブログの焼け具合

2006年09月25日「オーマイニュース日本版」に寄稿しました
http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000001743

コメント数÷トラックバック数、係数大なら「ヤジウマ型炎上」

「ブログが炎上中」と、ニュースになることが多くなった。

 「炎上」などというと初めて聞く人には物騒な話ではあるが、ブログの記事のエントリーで物議をかもしている状態が「炎上」と表現されるようになってきた。

 実際の火事のように燃え盛って、記事が読めなくなるわけではない。普段、読んでいる人が異論を唱え始める段階の「ブログのボヤ」から始まり、その「ボヤ情報」を見て、集まる人が多くなり、対応を誤って「ブログの半焼」となる。そして、最終的に本人がブログをやめてしまったり、削除したりするような「ブログの全焼」まで状態もさまざまだ。

 大多数の「炎上」の重要な構成要素は、噂を聞きつけてきたヤジウマだが、ヤジウマだけでは「炎上」は起こりえない。ページビューが増えるだけである。広告を掲載しているブログや、アフィリエイトであさましく稼ぎたい人にとって、ヤジウマは大歓迎である。

 問題はコメント欄だ。匿名でも、他人のメールアドレスを使ってでも、とにかく気軽に、自分の身柄は安全なところに伏せておいて、対象ブログを攻撃したりイジメることができる。日本人のネット文化はこの「匿名」によって育てられてた面があるが、そろそろ実名で行動できるオトナになってもイイ頃だと思う。

 「ブログ炎上」とは通常、このコメント数の多さをさす。あまり経験のない方は、自分の全人格が否定されたような気分になり、実際、病に伏せってしまう人もいるほどだ。しかし、あえて「気にしないこと」とアドバイスしたい。

 注意すべきは、トラックバックと言われるブログからの異論である。ブログは実名でないにせよ、自分の読者を持っている。その読者を対象とするアウェーからの異論なので、耳を傾ける価値がコメントよりも数段ある。

 実際、コメントにエントリーするのと、自分のブログに記入してトラックバックするのでは、かける時間も思考量も違う。ボクの体感では50倍ほどトラックバックのほうが気を使う。ブログは自分の読者に対してパブリックに表明する意見であり、その読者がブロガーであれば、オピニオンの伝達距離はさらに広がるのである。

 そこで、このコメントとトラックバックの関係で「炎上」の度合いを測ってみようと作ってみたのが、「ブログの炎上係数」だ。増え続けるコメントを母数として、トラックバック数で割る。これによって、ある指標が見えてくると仮定している。

 炎上係数=コメント数÷トラックバック数

 トラックバックは自分のブログのURLを知らせるため、逃げ隠れしながら気軽に書けるコメントよりも責任を伴う。平たくいうと、「無責任なヤジウマ発言」が「責任ある発言」の何倍に達しているのかが、「炎上の度合い」と見ることができるのではないだろうか?

 たとえば植草一秀氏が9月13日に痴漢の現行犯で逮捕された時の「植草一秀氏を応援するブログ」の場合、ニュースでは「3時間で500を超える書き込みが殺到し炎上状態に近い」と記述されているが、2006年9月15日午前3時段階では、コメント数1923÷トラックバック数72であり「炎上係数26.7倍」であった。

 あるいは、ボクサーの亀田選手を支援したということで炎上したプロスキーヤーの上村愛子さんのブログ。コメント数1779÷トラックバック数31で「炎上係数は57.3倍」であった。

 また乙武洋匡さんの「紀子さま出産」コメントは、コメント数1598件÷トラックバック数84=19倍であった。その後の「深くお詫びします」のエントリーは、コメント数3986に対し、トラックバック139で、28.6倍の炎上係数があらわれた。

 よってコメント多、トラックバック少の、炎上係数の倍率が高ければ高いほど、単なる「ヤジウマから派生した冷やかしコメント」であり、「ヤジウマ型炎上」として区別すべきではないかと考える。

 「炎上係数」を通すことによって、識者およびオトナが気にする炎上なのか、イジメに近い、興味本位での炎上なのかの炎上の質さえも判断することができるのではと感じる。もちろん、ボクは「トラックバック多」で炎上しているブログほど、本当の意味での物議を醸しているブログと判断したい。

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